スピッツ

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スピッツ

前作『三日月ロック』から約2年4ヶ月ぶり、ニュー・アルバム『スーベニア』が完成!
今回も亀田誠治との共同プロデュースにより、"記念の品"を意味するタイトルにふさわしい
新たなるスピッツのはじまりを感じる期待の1枚です。

(初出『Groovin'』2004年12月25日号)

スピッツ-A.jpg 五感と季節を結び付けて連想するのが好きだ。特に「夏の夜の匂い」とか「ビートルズのレコードを買った冬の日」など、嗅覚と聴覚の記憶をたどるときに「季節」は欠かせないキーワードになっている。そんな私にとってスピッツは秋を連想させるアーティストである。それは夏から秋を感じるノスタルジックな詞の世界からと、今までのアルバム・リリースが秋に多かったからだと思うのだが、今秋にリリースされたのはシングル『正夢』のみ。前作『三日月ロック』からもう2年以上が経過しているのに今年はアルバムのリリースはないのだろうかと不安に思っていた頃「スピッツ、ニュー・アルバム発売!」の知らせが飛び込んできた。
 スピッツ約2年4ヶ月ぶりのニュー・アルバムとなる今作は、前作に引き続き亀田誠治との共同プロデュースによるもので、タイトルの「スーベニア」とは、英語で"思い出"や"記念の品"などを意味している。前作『三日月ロック』で記念すべき10枚目のオリジナル・アルバムをリリースし、今作で新たなるスピッツの始まりを思わせる「記念の1枚」といった意味が込められたタイトルなのだろうか、収録曲13曲どこから聴いてもスピッツ色満載といった1枚に仕上がっているが、全体を通して「はじまり」や「再生」を感じるアルバムでもある。毎回楽しみにしている収録曲のタイトルも「ナンプラー日和」「ほのほ」「ワタリ」など今回もヴァラエティに富んだ顔ぶれで、目の前にあるCDを見るだけで「どんな曲なんだろう?」とワクワクしてくる。
 全ての始まりを感じる春の朝を歌った「春の歌」でアルバムはスタート。間奏部の美しいストリングスに加えて「ああ 心がしおれそう会いたい もう待てない これ以上待てない」なんて歌われてしまったらもうノック・アウトです、といった感じの「ありふれた人生」。今回のツアーのタイトルはここから使われたのではないかと思われる「甘ったれクリーチャー」は、バンドとしてのスピッツのかっこよさが前面に出された1曲。是非ライヴのオープニングはこの曲でと思うファンは私だけではないはず。ピアノをバックに歌われる「優しくなりたいな」は、コンサート・ホールで録音されたような残響効果でピアノと声がひとつになって空気に溶け合っていく浮遊感を醸し出している。レゲエ調のリズムにもギター・バンド、スピッツの色が濃く出ている「自転車」はマサムネ氏のひょうひょうとした歌声と「なんとかなるだろう」と繰り返される歌詞がなんともほのぼのとした味わい。アカデミー女優の名前をタイトルにした「テイタム・オニール」は彼女が出演した映画「がんばれ!ベアーズ」からインスパイアされたものだろうか、70年代を彷彿とさせるハンド・クラップとキーボードが気持ちよい。アルバム最後をしめくくるにふさわしい「みそか」では、新しい朝の訪れとそれを受け入れる歌声の力強さに胸いっぱいになってしまう。
 充分な時間をかけて聴き手と作り手共に満足と納得のできるものだけで構成された、待望のニュー・アルバム『スーベニア』。アルバム発売に合わせて全国ツアー「SPITZ JAMBOREE TOUR "あまったれ2005"」もスタート。何と今回は、前半と後半にわけて合計70本近くも行われるとか。来年のスピッツはなにかが違う、なにかやらかしてくれそう…そんな期待で胸がいっぱいである。

Text by 大野裕子(パルシェ店)

『スーベニア』
スピッツ-J.jpg




ユニバーサル J
2005年1月12日発売
CD
UPCH-1380
¥3,059(税込)

★『スーベニア』 収録曲
01.春の歌 02.ありふれた人生 03.甘ったれクリーチャー 04.優しくなりたいな 05.ナンプラー日和 06.正夢 07.ほのほ 08.ワタリ 09.恋のはじまり 10.自転車 11.テイタム・オニール 12.会いに行くよ 13.みそか

前作『三日月ロック』から約2年4ヶ月ぶりのオリジナル・アルバム。前作同様、亀田誠治との共同プロデュースにより、充分な時間をかけて聴き手と作り手共に満足のできる楽曲ばかり。ヒット・シングル「正夢」を含む全13曲を収録。メーカー先着特典としてオリジナル・ステッカーをプレゼント。

【スピッツ オフィシャルサイト】http://spitz.r-s.co.jp/

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