つばき

SPECIAL INTERVIEW

つばき

着実にライヴ活動を重ねその名を広めてきたつばきが、シングル『昨日の風』でメジャー・デビューを果たした。3曲入りの本作は、なんとトリプル・タイアップ。デビュー作にしてこの注目度、けれどそんな周囲の熱っぽさをよそに「これまでとあまり変わってないですね」と一色徳保(Vo&G)。メンバー・チェンジを経て、"椿"から"つばき"への改名と、決してメジャーまでの道のりは最短でも平坦でもなかった。それでも、"つばき"でありたい意味とは…。『Groovin'』インタビュー完全版、つばき結成の経緯から『昨日の風』まで、メンバー自ら語ってもらいました!

(初出『Groovin'』2005年2月25日号)

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ーー:まずは『Groovin’』初登場ということで、つばき結成のいきさつを教えてください。
一色(Vo&G):元々は大学時代にサークル仲間と幼馴染みで、今の原形である"椿"を結成したのが始まりです。後にベースが楽器を直すリペアマンになりたいって事で脱退するんですけど、そのベースとの最後のライヴの時、たまたま別のバンドを観に来ていた小川君と楽屋で会ったんですよ。
小川博永(B):その時は、別のバンドのメンバー募集の張り紙を見てライヴに来てたんですけどね。曲も気になったし、話したら思わぬ意気投合で、すぐデモ・テープ下さいって話になって。
一色:その後は、小川君で即決でしたね。ちなみにその抜けたベースは、その後すみやで働いてたんですよ(笑)。
ーー:では、岡本奈穂子さん(Ds)と椿の出会いは?
岡本(D): 前のドラムの人が脱退した後に、 小川君の知り合いからドラムが出来る人を探しているバンドがあると聞いて。それでライヴを観に行っていいなぁと思って。初めて観た時にすでに心に残る曲が何曲かあったし。 それでリハに入ろうってことになって…。
一色:彼女以外にも5人くらいと合わせたんですけど、直感で「これだ!」って思って決めましたね。
ーー:でも、男性2人のバンドにドラムとして入る抵抗はなかった?
岡本:それまでも女の子バンドってやったことないんです。だから別に男の子だけのバンドでも、全然抵抗はなかったですね。
ーー:ようやく現在のメンバーが集まって…。その後、"椿"から"つばき"への改名と?
一色:メンバーもガラリと変わったし、バンド名を変えても良かったんですけどね。他の名前も色々考えたし。だけど「椿って名前をどう思う?」って他の2人に聞いたら「椿でいいんじゃないか、椿でいいよ」っていう事になって。 だったら、せめて漢字からひらがなに変えてみようかと。漢字の頃より雰囲気も印象も変わるし。それで今の"つばき"という名前に至ったんです。
ーー:ちなみに、そもそも"椿"という名前の由来は?
一色:俺は愛媛県松山市の出身なんですけど、椿って松山市の「市花」なんです。あと結成当時アルバイトしていた焼肉屋に、たまたま「椿」というメニューがあったんですよ。それを見てたら「椿っていいんじゃないかな」って…(笑)。
ーー:なるほど、納得(笑)。名付け親でありつばきのキャリアを思えば、リーダーはやはり一色さん?
一色:うーん、まぁしょうがいないからそういう雰囲気というか… 。でもリーダーっていう器じゃないですからねぇ。1人で暴れてダダこねて、でも結局俺がまとめている感じでしょうかね。

『着々ときてるなぁって感じ…』(一色)
何だか最近、ロック・バンドが元気だと思う。毎年恒例となった大型フェスにより、聴き手にもグッと身近な音になったのかもしれない。そしてステージとオーディエンスが共に空間を楽しむべく、"歌えるロック"も増えた。つばきもまた、ライヴ感を大切にしてきたバンド。言葉の足らない部分は、人懐こいポップな音で手を差し伸べる。共に歌うことで聴き手の体へと刻み込む。そうやってつばきは、ライヴで自分たちの音楽をみんなの音楽へと変えてきた。そしてより多くの人の音楽になる為に、つばきは新たな一歩を歩き出した…。

つばき-Aサブ.jpgーー:すでにインディーズでも注目されていたつばきさんですが、ライヴ活動を着々と重ね、昨年末には大型フェスにも出演されましたよね。
一色:そうですね。でもそれまでもライヴはやっていた訳だから、着々ときてるなぁって感じですよ。お客さんが3人だ?なんて時もあって、それが20人になって50人になって…って。50人いったかと思ったら、30人に減っちゃったり。ずっとそんな話を繰り返してここまできましたからね。確かに大きなステージで出来た事は嬉しかったけど、着実にやってきたっていう自信はありましたから。
ーー:そして晴れて2005年、メジャー・デビューと。まさに満を持して、といった感じですね。
一色:ありがとうございます。でも正直、心境的な変化はあまりないですよ。メジャーになったからといって、いきなり何かが変わった訳ではないし。曲を作って、ライヴをやって。そういった自分たちの活動を着実に重ねていった事で、徐々に周りに人が集まってきたというか。あ、でも変化といえば、レコーディングする時に、スタジオが長時間使えるようになったかな(笑)。
ーー:タイトル曲の「昨日の風」について聞かせてください。
一色:実はこの曲はスタジオで即興で作った曲なんですよ。あれこれ模索してた時に、ド頭の「できるなら笑って」のフレーズがとっさに出たんですよね。
ーー:せーので詞とメロディーが出てきたって事!?
一色:そうですね。でも「できるなら笑って」ってね…その時の俺はかなり暗かったかもしれない(苦笑)。
ーー:でもその言葉やフレーズが自身の中に残ったというのは?
一色:俺の曲の作り方は、いつもこうなんです。1フレーズから広げていくっていう。とっさであっても、その時出た言葉や音って、自分が一番表現したい事なんだと思うし。その時の自分の全てが詰まってると思うんですよね。
ーー:では「昨日の風」って言葉はどこから?
一色:昨日あった事が楽しかろうが、悲しかろうが、つまんなかろうが、そういうのを忘れずにちゃんと受け止めて明日へ向かえたらいいなって。嫌な事とか忘れたい事を「それは俺と関係ない!」っていうのが嫌なんですよ。そういう部分も抱えていきたい。それでいて、できれば笑っていきましょうよ、って。
ーー:一色さんの書く歌詞って、日本語を大切にしてますよね。
一色:それは単に英語が分からないだけです(苦笑)。というか、自分の事を歌詞に書き出している訳だから自分が喋ってる言葉だけで書けるし、伝わると思ってるので。そうする事で、その時の自分が分かったりもするし。そういう意味でも、つばきは日本語でいいんじゃないかなって。
ーー:確かに日本語だと親しみがあるし、身近に感じます。聴き手も同じ視点でいられますよね。
一色:俺の書く詞は「詩」じゃなくて、あくまでも「歌詞」。割と分かりやすく書いてるつもりだけど、もし意味が分からないって事があっても、ならばそこはメロディーに乗った時に分かってもらえたらって思うし。詞も大切だけど、あくまでも3人が演奏して初めて楽曲が完成するし、成り立つものだと思ってますから。
ーー:本作は収録された3曲ともがタイアップ付き。どの曲も個性的でつばきの"顔"に相応しい曲ばかりですよね。
一色:そうですね。このシングル1枚で、つばきを知らなかった人やちょっとでも気になってくれている人へ聴いてもらうように間口が広い曲を選びました。せっかくメジャーだし、全国に自分達の曲が広がる訳だから、引っ掛かりの良さを大切にしましたね。
ーー:中でも「昨日の風」は、メロディーがとてもキャッチーですよね。出だしからガッチリ掴まれます。
小川:ここまでポップな曲はこれまでのつばきに無かったし、個人的にもそのポップさが印象的だったから、その空気を大切に広げていきました。キャッチーだからタイトル曲にした訳でもなくて、良さを突き詰めた結果。メンバー的にはどの曲が1曲目でも良いと思って作りましたね。
ーー:つばきの楽曲は、「静」と「動」が同居しているサウンドが印象的。この緩急が強烈なインパクトで、ここにバンドで奏でる事の醍醐味を感じます。
岡本:初めて合わせた時から、ギターと歌のみのサビ始まりと、その後に3人で入る時の爆発力にインパクトがあったので、そこは崩さないように心掛けました。A?Bメロは自然に流れる感じに、そしてサビの疾走感も大切にしましたね。
ーー:お話を伺っていると、3人とも最初のインスピレーションを大切にしているようですね。
一色:そう。皆バーンっと直感でしかやってないから、言葉で説明するとなると探しちゃうんですよ。本当に感じたままをやってるだけだから、聞かれても分かるかよ!って(苦笑)。でも思ったままを音にする事がバンドにとって一番いいことだし、これからも大切にしていきたい。その辺りもこのシングルで感じてもらえたら嬉しいですね。

『できれば、この夢をずっと見ていたい。どこまでもつばきでいたいと思う』
この取材にあたっての資料に書かれていた一色氏のコメントである。まっすぐな音楽への思い、つばきへの愛情を感じるコメントだ。そしてまたM-2「夢のあとさきに」も、途中で目覚めてしまった夢の結末を現実で描き出したいという思いが込められている。つばきとしての夢、この先の思いを最後に聞いてみた。

岡本:単純ですけど、ただ純粋に沢山の人につばきを知ってもらいたい。つばきの曲を聴いてもらいたいですね。
小川:この先もずっと、つばきで音楽をやっていきたい。それが今の夢ですね。
一色:どうせ人間だし、モチベーションも上がったり下がったりだろうし、勿論バンドだってそういう事があると思うんですよ。でもその中でもちゃんと音楽が出来ればいいなって。自分らが良いと思える音楽が作れれば…。そして自分たちのやりたい音楽だけに収まらないで、届けたい音、届けるべき音、そういった色々な要素もバランス良くやっていければいいなって思ってます。

(2005年1月25日/東京・渋谷にて)
Text by 浜田幸子(編集部)

『昨日の風』
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R and C Ltd.
発売中
Maxi Single
YRCN-10076
¥1,050(税込)

地道に、そして着実にライヴ活動を重ね、その音と声は確かに人の心へと届いた。つばき、満を持してメジャー・デビュー。どの曲からもバンドとして音を奏でる事の喜びをひしと感じる、静と動が同居したサウンドの緩急が気持ちいい仕上がり。先着特典としてステッカーをプレゼント。

【つばき 公式サイト】http://tsubaki-net.com/

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