レミオロメン

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レミオロメン

何気ない日常の切り張りから浮かび上がる一瞬のきらめき…。
2005年3月9日、そんな瞬間を捉えた永遠のポップ・アンセム『ether[エーテル]』誕生!!

(初出『Groovin'』2005年2月25日号)

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 「人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」こんなことを言われたら、あなたならどんな瞬間を選ぶだろうか?この興味深いコンセプトを題材にした映画が『ワンダフルライフ』という作品だ。天国の入り口で上記のようなことを言われた死者たちは人生最良の思い出を1つ選択し、職員らと共に7日間という期限でその思い出を映像として再現しなければならない。最終日に上映会が開かれた後、ようやく死者は安らかな眠りにつくことが出来る…。
 カンヌ映画祭で話題となった『誰も知らない』の是枝裕和氏が7年前に監督したその映画は、個人的に邦画で一番好きな映画なのだが、観終わった後に冒頭の質問を自分なりに考えてみたことがある。ほどなくして、ぼや〜っと頭に浮かんできたシーンは大学時代、ある冬の1日の何気ない一瞬。別に他人に語るべき悲劇のどん底シーンでも幸福の絶頂の瞬間でもない、素朴で他愛ないひとときだ。そんな普通のシーンが浮かんできたことに驚いたが、結構人生とはそういうものなのかも知れない。実際、映画の中でも素人のエキストラがその質問に答えるシーンがあるのだが、絵に描いたようなドラマチックな瞬間はほとんど無かったと記憶している。死ぬ時に思い出したいような、その人の人生を象徴するような瞬間とは、本当に普通の何気ない一瞬なのかも知れない。
 何やら深い話になってしまったが、そんなことを思ったのはレミオロメンの2ndフル・アルバム『ether[エーテル]』を聴いたからだ。何気ない日常の切り張りで綴る日記のような歌詞からは激しくドラマチックな状況描写は見あたらないし、ストリングスやアナログ・シンセを多用したサウンドからはたおやかな情感が漂い、聴く者を優しい気持ちにさせてくれる。昇り調子の彼らだから、ここぞとばかり気張った新作が届けられるのかと思いきや、こんなにも穏やかな空気を内包しているとはちょっと意外だった。
 例えば1曲目の「春夏秋冬」は、四季の移り変わりのような優しい目線で恋人のことを思う歌詞が胸に染みこんでくる。朝焼け、綿の雲、二番星といった自然を感じる言葉の響きと、70年代後半を思わせる懐かしいシンセサイザーの音色、流麗なストリングスの絡みが何とも美しい。すでにシングルとしてもリリースされている「アカシア」も、ギターのアルペジオとサビのメロディが印象的なミディアム・チューン。アカシア並木の風景が浮かんでくるような美メロ曲だ。メトロトンのような音から始まる「深呼吸」はレミ風癒しソング。「運命線からはみ出して もう少し自由になって」という歌詞は、ガンジ搦めに陥っている会社人には耳に痛いかも知れない。弾むアコースティック・ギターとグロッケンのイントロがアルバムの中で一番ポップな印象を与える「コスモス」と、ピアノの弾き語りから始まる「海のバラッド」で描かれているような、都会から離れた風景の中での男女の物語は、どこにでも落ちていそうな普遍的なストーリーだ。
 しかし冒頭で語った映画を思い起こさせる象徴的な曲が、本作がリリースされる日と同じタイトルがついた「3月9日」だ。「メンバーの共通する友人の結婚式のために作った」ということらしいが、365日の中でたった1日だけを選んで曲にするという行為に、彼らの素朴な人生観みたいなものが垣間見られて興味深い。またこの曲のミュージック・ビデオが実に映画的なのだ。姉の結婚式を体験する女子高校生の1日を追ったショート・ストーリーなのだが、まるで『四月物語』や『花とアリス』といった岩井俊二の映画のような瑞々しい趣がある。
 ちなみに本作のタイトルの「ether」という聞き慣れない言葉なのだが、「ethereal」と形容詞にすると、空気のような、霊妙な、極めて優美な、といった意味になり、音楽や文学など芸術分野の評論によく見られる言葉になるらしい。空気のようでいて優美…なんて、人生の何気ない、しかし尊い瞬間瞬間を表した言葉みたいだと思うのは僕だけだろうか。そして本作のタイトルにこれ以上ピッタリな言葉もないと思うのだ。
 更に本作がリリースされる3月9日には彼ら初となる武道館ライヴが決定している。1月にシングル『モラトリアム』、2月に『南風』、そして3月にアルバムである本作の発売と、怒濤の3ヶ月連続リリースの締めとして行われる武道館ライヴ。一体どんなステージを見せてくれるのか実に楽しみである。「3月9日」という日は、彼らにとってもファンにとっても人生で忘れられない一日になりそうだ。

Text by 高瀬康一(編集部)

『ether[エーテル]』
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ビクターエンタテインメント
(SPEEDSTAR RECORDS/OOKIGUMO)
CD
VICL-61577
3月9日発売
¥3,045(税込)

2005年のスタートダッシュ!3ヶ月連続リリースの最終章である本作は、「3月9日」「アカシア」「モラトリアム」「南風」といったシングル曲が収められた待望の2ndアルバム。高揚するグルーヴと美しいメロディ、流麗なサウンド・メイキングが融合した充実の内容だ。

レミオロメン 公式サイト】 http://www.remioromen.jp/

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