MY BEST CHOICE!

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第59回 
中野智人(すみや向ヶ丘ダイエー店 店長)

(初出『Groovin'』2005年2月25日号)

 先月、この『Groovin'』の記事「私が選ぶ2004年の年間BEST10+1」で折角1位に選んだので、レイチェル・ヤマガタについて書こうかと…。元々、女性シンガーってあんまり聴いてはこなかった口である。聴いたとしても性別を超えたような声の持ち主、例えばビョーク、フィオナ・アップル、エイミー・マン、PJハーヴェイ、etc…。これらの人たちはもちろん曲も良いのだけれど、その声の圧倒的なパワーでオールOKにしてしまえる力を持っている。そしてその声には悲しみだったり憂いだったり怒りだったり…が必ず含有されているのである。
 昔からそういう"負の感情"を漂わせるアーティストに惹かれる。大学1年の時がグランジ・ムーヴメントで、ニルヴァーナがブレイクした年で、その音と声にやられまくりだった事が起因しているのでしょう。
 で、レイチェル・ヤマガタである。この人の声もまた別格中の別格。デビュー・アルバム『ハプンスタンス』の1曲目「Be Be Your Love」を聴いた時は本当に震えが走った。悲しみや切なさを喚起させるハスキー・ヴォイス(って言うより、かすれ声って言ったほうがしっくりくるな)でシンプルなスロー・バラードを歌い上げるわけだが、聴いた後に残るのは不思議な事にそういった"負の感情"ではなくて幸福感だったり満足感だったりする。マジックと言ってしまえば簡単だけど、その1曲に込められた感情はとてつもなく複雑でいろんな色を放っているのだろう。
 この原稿を書き上げて1週間もすればレイチェルの初来日公演である。もちろん見に行きます。今から楽しみでしょうがない。今年に入ってからも色んなCDを買い漁っているが、当分はこの1枚から離れられそうにないな。

*なお次回は、鷲巣紀孝氏(すみや静岡イトーヨーカドー店 店長)が登場します。お楽しみに。

レイチェル・ヤマガタ
『ハプンスタンス』
レイチェル・ヤマガタ-J.jpg




BMGファンハウス
発売中
CD
BVCP-21401
¥2,548(税込)

1/26に発売された来日記念盤EP『ライヴ・アット・ザ・ロフト&モア…』がこれまた良い。これはアルバム曲のライヴなのでコア・ファン向けかもしれないが、そのライヴ感たるや目の前で歌っているかのごとく、です。4曲目のジョニ・ミッチェルのカヴァー「River」も秀逸。でもまずは、この1stアルバムを。

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