倉木麻衣

今春大学を卒業し、新たなるステップを踏み出した倉木麻衣。
2005年の第2弾シングルとなる軽快なアップ・チューン「ダンシング」は、
新しい何かが始まる"春"という季節を迎えるすべての人への応援ソング！

（初出『Groovin'』2005年3月25日号）

　倉木麻衣の2005年の第1弾シングル「Love, needing」。昨年5月にリリースされた「明日へ架ける橋」以来、約8ヶ月振りとなる久々の新曲だったが、まずはそのジャケット写真の大人っぽい雰囲気に驚いた。今までにない色香が漂う表情とポーズ。ピンクのレースに縁取られた黒いキャミソール姿は、女の私から見てもドキドキするものだった。言うなれば、いつもボーイッシュな格好をしている友人が、突然セクシーなドレスを身にまとって目の前に現れた時のような感覚…。女は同性の変容にとても敏感である。それが「キレイになった」というプラスの変身なら、なおさら気になるもの。羨望の眼差しを注ぐと共に「何かあったの?」と、そのヒミツを知りたくなる。ハッとするほど"女っぷり"を上げた今の倉木麻衣は、私にとって興味の尽きない存在だ。
　1999年に「Love, Day After Tomorrow」で鮮烈な日本デビューを飾ってから丸5年。コンスタントに作品をリリースし続け、着実にステップ・アップしてきた倉木麻衣。今春、大学卒業という節目を迎え、新たなるステージに踏み出した彼女は、成熟した女性の魅力を開花。従来のピュアなイメージから、コケティッシュなムードを醸し出す大人の歌姫へと、大きく進化を遂げた。また、大学生とアーティストという二足のワラジを脱ぎ、音楽活動に専念できる環境となったことによって、より積極的に楽曲制作にアイディアを提示するなど、更なるアーティストとしての充実感も増している。
　さて、そんな彼女が2005年のスタートを切った「Love, needing」に続き、早くもニュー・シングル「ダンシング」をリリースした。そのタイトル通りに、思わずステップを踏みたくなるような今作は、様々なものが芽吹く"春"という季節に相応しい軽快なアップ・チューン。新たなスタートを切るすべての人々へ向けた応援ソングでもある。《私も今変わろうとする/恐れずトライし続け/答えを見つけるから》《一緒に君も心のシェルター/崩してみようよ》《もし一秒でも/君の笑顔輝いたなら/心の奥の夢見つけ出せる》といったポジティヴなメッセージが実に清々しい。倉木自身も新しい環境に身を置く立場だけに、等身大の言葉で綴られた歌詞がストレートに心に響いてくる。これまでよりパワフルなヴォーカルからも、"心機一転"の心意気が伝わってくるようだ。作曲&アレンジは、これまで「明日へ架ける橋」や「Stand Up」「Feel fine!」等を手掛けてきた徳永暁人。彼らしいタイトなパーカッションとグルーヴ感溢れるベース・ライン、エッジの効いたギター・カッティングが印象的だ。ダンサブルなサウンドと力強いメロディーが、ともすれば壁にぶち当たり、挫けてしまいそうになるフレッシャーズの心を勇気付けてくれることだろう。またc/wには、デビュー時から倉木の作品に携わってきた大野愛果による「through the River」を収録。こちらは「ダンシング」から一転、しっとりとしたバラードに仕上がっており、別れを決意し明日へと歩き出す女性の姿が繊細に描かれている。同じくc/w曲「You look at me〜one」は、ポップなミディアム・チューン。"いつも心はあなたに向けている、決して1人じゃない"というテーマが胸にジンと迫る。
　16歳でデビューした倉木麻衣は現在22歳。これからもアーティストとして、また女性として、更に魅力的に進化していくはずだ。5年後、10年後には、一体どんなシンガーになっているのだろうか。迷うことなく真摯に前へ進み続ける彼女から目が離せない。

Text by 池 佐和子