川江美奈子

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川江美奈子

注目の女流シンガー・ソングライター、川江美奈子が待望の1stアルバムをリリース!
シンプルなメロディーと言葉によって紡がれるエヴァーグリーンなサウンドを
とくとご堪能あれ!

(初出『Groovin'』2005年4月25日号)

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 昨年10月、シングル「願い唄」でメジャー・デビューを果たしたシンガー・ソングライター、川江美奈子。一応フレッシュな新人という立場ではあるが、ミュージシャンとしてのキャリアは10年以上に渡るベテランだ。早稲田大学の音楽サークル"Street Corner Symphony"にて、のちのゴズペラーズやSMOOTH ACEの面々と交流を温め、1992年にはアカペラ・グループ"TRY-TONE"の一員としてプロ・デビューの経歴も持つ。1997年のグループ脱退後は、更なるスキル・アップを目指し渡米、名門バークリー音楽院でピアノとアレンジを習得した。帰国後は、Lyrico、松本英子、中森明菜らへの楽曲提供を始め、一青 窈のライヴのバッキング・ヴォーカルを務めるなど、幅広い活動を展開している。最近では、中島美嘉の「桜色舞うころ」の作詞・作曲を手掛けたことでも大きな話題を呼んだ。
 新人にして既に実力・貫禄共に充分。そんな彼女の魅力といえば、時を経ても色褪せることのない普遍的なサウンドにある。奇をてらうことなく紡がれるシンプルなメロディーと言葉には、世代を超えて愛される要素が満載だ。それは、例えばカーペンターズやキャロル・キングといった名アーティストたちと同じ魔力を持っていると言い換えてもいい。
 シンガー・ソングライターとして大いなる可能性を見せ付け、J-POPシーンの注目を集めている川江美奈子が、先月リリースされた先行シングル「宿り木」に続き、待望の1stアルバムを発表した。タイトルに『時の自画像』と冠し、始まりと終わりに時計の秒針の音をあしらった今作は、流れゆく日常の景色の中から、自分にとって"大切な時間"を切り取った、12編の連作短編小説のような仕上がり。ひとつひとつの曲がストーリーを持ち、全編を通して聴き終えたとき、"時の流れ"の儚さ、優しさという大きなテーマがしんしんと伝わってくる。この作品の基軸となるオープニング・ナンバー「そのとき」を皮切りに、遠い日の自分へ向けた手紙だという「最終電車」、仲間たちと紡ぐハーモニーの楽しさを歌った「tuner fork」、"会いたくて、会えなくて…"と恋のもどかしさを切なく綴った「恋」(Lyricoへの提供曲のセルフ・カヴァー)、姿を変えゆく街並みをポジティヴに捉えた「青写真」、空気のような存在の相手との風景をちょっぴりシニカルな視点で描いた「ななくせ」、《大切な人への思いを想いつくままにたとえてみた》と語る彼女なりのマザーグース「たとえうた」、過ぎ去ってゆく日々に正面から向き合った「ずっとはるかあなたと」等、目を閉じると鮮やかに情景が浮かぶナンバーが次々と溢れ出してくる。もちろん、サウンド面も満足のいく内容だ。ジャズのエッセンスを取り入れたものや、ノスタルジックなギター・サウンドを打ち出したもの、そしてTRY-TONEのメンバーによるアカペラを活かしたもの等、どの楽曲も丁寧に練り込まれ、高いクオリティーを感じさせてくれる。
 川江美奈子が紡ぎだすエヴァーグリーンなサウンド。それは、世代やジャンルを問わず、多くの音楽ファンに受け入れられることだろう。今後の彼女の飛躍に期待したい。

Text by 池 佐和子

『時の自画像』
川江美奈子-J.jpg




Dreamusic
発売中
CD
MUCD-1125
¥3,045(税込)

"時"をテーマにした待望の1stアルバム。ひとつひとつの楽曲がストーリーを持った連作短編小説のような仕上がり。ジャズ・テイストのナンバーや、アカペラを取り入れたナンバー等、サウンド面のクオリティーも高い。日本屈指のチェリスト、溝口 肇がゲスト参加。

【川江美奈子 Official Website】http://www.minakokawae.com/

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