アン・サリー

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アン・サリー

「素材の持ち味が存分に引き出された絶品料理」(?)って感じの1枚。
アン・サリーの持つ「声」の魅力(旨み)が充分に味わえる、初のセルフ・プロデュース・アルバム。
テーマは音楽が染み渡る街【ニューオリンズ】。

(初出『Groovin'』2005年4月25日号)

 この作品のテーマはずばり【ニューオリンズ】。ヨーロッパ、アメリカ、カリブ海、そしてアフリカ文化が複雑に交錯する街、そして何よりもジャズの故郷としても知られ、ルイ・アームストロング、ウィントン&ブランフォード・マルサリス、ニコラス・ペイトン、ハリー・コニックJr.、ドクター・ジョン等、名前を挙げ始めたらきりがないくらいに多数の素晴らしいミュージシャンを輩出した街でもある。また、最近では若い世代の優秀なミュージシャン達の活躍に見られるように、今までの伝統を守りつつ、新たな息吹を感じさせるような音楽を常に生み出し続けている所がニューオリンズの素晴らしいところであろう。
 2001年『ヴォヤージュ』でアルバム・デビュー以来、2003年には『デイ・ドリーム』『ムーン・ダンス』の2枚のアルバムをそれぞれ別々のレコード会社から異例の同時リリース。更に同年12月には初のライヴ・アルバムにして今までのベスト・ソング・コレクション的な内容の『ハレルヤ』をリリース。特に『デイ・ドリーム』『ムーン・ダンス』の2作品は同時リリースにもかかわらず、クオリティの高さには驚かされたのを覚えている。彼女の音楽はいつもゆったりとした時間の流れを感じさせてくれて、日々時間に追われ忘れがちな「何か」を「忘れていない?」って問いかけているように思うのは、私だけではないはず。
 そんな彼女の、生活の隅々まで音楽が染み渡る街、ニューオリンズで過ごした3年間の日々の思い出がぎっしり詰まったアルバムがこの『ブラン・ニューオリンズ』。その中での歌声には、日々の流れに身を委ね、ゆったりと培った1つ1つの歩みが成長として確実に跡を残している。収録されている曲は、現地のセッションでしばしば演奏され、またルイ・アームストロングのレパートリーとしてお馴染みのニューオリンズのスタンダード・ジャズやR&Bナンバーといった、アン・サリーそしてミュージシャン達にとっても手馴れた楽曲が中心に選ばれ、更に日本語曲2曲が加えられている。アルバム『ムーン・ダンス』で歌われている有名な「蘇州夜曲」の作者として知られ、ニューオリンズへの憧れを度々語っていたという服部良一作の名曲「胸の振子」とシンガー・ソングライター、西岡恭蔵がニューオリンズや南米を旅行した折に生まれた「アフリカの月」がその2曲である。彼女のヴォーカルとフレドリック・サンダースのピアノ伴奏によるデュオで、見事にニューオリンズの風景が目に浮かぶような素晴らしいトラックに仕上げている。
 全体は「ウッド・ベース・セクション」「ピアノ・セクション」「クインテット・セクション」の3つで構成され(大半の曲で選ばれたのはファースト・テイクだとか…)、アン・サリーの魅力を上手く(旨く)織り交ぜながらニューオリンズという街の様々な側面を見事に表現している素晴らしい作品。(サッチモの「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」も収録。(良い感じだし!)是非、聴いてみて!!

Text by 堀尾康弘(東川口店)

『ブラン・ニューオリンズ』
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ビデオアーツ
4月27日発売
CD
[初回限定盤]特典CD付 VACM-1261
[通常盤]VACM-1262
¥2,940(税込)

「ウッド・ベース」「ピアノ」「クインテット」の3セクションからのテイクにより構成された全13曲収録。お馴染みのニューオリンズのスタンダード・ジャズやR&Bナンバーを中心に、日本語曲も2曲加えた充実の内容。初回限定盤には特典CD付き!!

【アン・サリー 公式サイト】http://www.annsally.org/

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