ザ・ホワイト・ストライプス

前作『エレファント』が大ヒット、2003年の音楽業界を制覇したザ・ホワイト・ストライプス！
SO WHAT?! そんなこと、奴らにゃ関係ない！より無垢で誠実な情熱でレコーティングされた新作が
遂に完成！まずは聴け、そして体験せよ！ロックン・ロールの未来を!!

（初出『Groovin'』2005年5月25日号）

　この世の中には、ザ・ホワイト・ストライプスの音楽を聴く人と聴かない人の2種類がいると思うが、既に聴いたことのある人であれば、こんな文章を読んでいる暇はない。すぐにこの新作『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』をレジへ持って行くこと。絶対に期待を裏切らないはず。もしもまだ音を聴いた事がない人には、この文章がそこに渦巻く音楽の情熱、未来を体験してもらう為のほんの少しの手助けになればと思う。
　そもそもザ・ホワイト・ストライプスは、メグ（姉）とジャック（弟）のホワイト姉弟により1997年に結成された2人組のバンド。メグがドラムス、ジャックがギター／メイン・ヴォーカル／ソング・ライティングを担当している。出身はデトロイトで、ロックン・ロールの街、モータウン（モータータウンからきている）の生まれた街だ。現在は人口の大半を黒人が占めており、今の主流はヒップ・ホップやラップである。あのエミネムの出発点もこのデトロイトである。またMC5やストゥージズの流れから、ガレージ・ロック・シーンとしても有名で、そんな骨太の街からザ・ホワイト・ストライプスは、ガレージ・ロックの救世主として産声をあげた。
　ガレージ・ロックとは60年代アメリカでバンド・ブームが起こった時、その多くのバンドがガレージを練習場にしており、荒々しいギター・サウンドの音感からその名前が付いた。メイン・ソングライターであるジャックの音楽ルーツは、アメリカの伝統音楽であるブルースでもある。1stアルバム『ザ・ホワイト・ストライプス』は、まさに60年代的ガレージ・サウンドであるが、続く2ndアルバム『デ・ステイル』ではガレージ・ロックをベースにしつつ、彼のルーツであるブルースやブリティッシュ・ポップスまで取り入れた多彩なサウンドとなった。この頃から少しずつ注目されるようになり、3rdアルバム『ホワイト・ブラッド・セルズ』で更にそのサウンドを推し進め英国進出を果たす。ザ・ホワイト・ストライプスの本質はライヴにあり、アルバム同様さらにその情熱は加速され、精力的なプロモーションとTV出演、そしてライヴでその情熱の片鱗を見せつける。結果、イギリスで爆発的人気を勝ち取る事となり、さらにその熱は全世界を焼き尽くす事となった。そして2003年に4thアルバム『エレファント』を発表。2003年の音楽業界は、まさにザ・ホワイト・ストライプス一色だった。グラミー2部門を受賞し、この年の全世界の音楽誌でアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
　そして全世界が待ち望んだ新作『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』が、6月1日にいよいよリリースされる。もう一度ザ・ホワイト・ストライプスの音楽を整理してみると、実にシンプルで誠実である。しかも決して古めかしくも、模倣でもなく、なぜにこれほどまでにエキサイティングにさせるのか。実際に聴いてみることにより、ザ・ホワイト・ストライプスの本質や魅力が見えてくるはずだ。そして出来ればライヴを体験する事により、なぜザ・ホワイト・ストライプスがロックの未来を切り開いていくことが出来るバンドかが理解出来るはず。
　最後に、ライヴDVD『ザ・ホワイト・ストライプス・アンダー・ブラックプール・ライト』も発売されているので、未だ彼らのエキサイティングなライヴを観た事がない方にはこちらもお勧めしたい。とにかくかっこいいから。

Text by 伊藤秀樹（玉川高島屋店）