オアシス

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オアシス

10年の歳月が過ぎても、オアシスはやっぱり無敵だった。
全てはここにある。響き渡るこの音楽を聴けばいい。あとは何もいらない。
僕らはまた、新たな10年を彼らと共に歩み始める。

(初出『Groovin'』2005年5月25日号)

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 『スーパーソニック EP』の1曲目「スーパーソニック」が掻き鳴らされた時の衝撃は今でも鮮明だ。オアシスをオアシスたらしめたあのギター・リフ、そして初めからオンリー・ワンであったリアムの不遜で神々しいヴォーカル。初めから全てがそこにあったからこそ、オアシスは無敵だった。あの鮮烈な登場から早10年。彼等の辿り着いた地平はとんでもなく高いレベルへと到達している。数々の名曲を世に送り出しながら、今なおロックン・ロール・スターであり続けるその底力を通算6作目となる『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』ははっきりと証明している。
 今作の大きな変化は、今までがほぼノエル1人で作ってきた楽曲によって占められていたのに対し、ノエル、リアム、アンディ、ゲムの4人が作曲に携わった事で、ノエルの楽曲が過半数を割った事だろう。新たなバンド・ケミストリーを手に入れなければこうはならない。明らかにネクスト・ディケイドへの船出をこの4人が進みだした証拠ではないだろうか。
 では、1曲ずつ追っていこう。アルバム冒頭を飾る「ターン・アップ・ザ・サン」はアンディの曲。元ライドの…という冠は要らないくらいの、正統派オアシス・ナンバーだ。リアムのドスの効いた声が冴える。続く「マッキー・フィンガーズ」は、ノエル・ヴォーカルの行軍のようなエイトビート・チューン。3曲目が本作からのファースト・シングルとなる「ライラ」。この曲はヤバイ。もう大合唱間違いなしの名曲。バンド・サウンド全開の力強い陽性ナンバー。新たなオアシス・クラシックの誕生である。リアムの曲「ラヴ・ライク・ア・ボム」はアコギとピアノが繊細なメロディーを紡ぎだすミディアム・チューン。とても美しい曲。次はノエルの「インポータンス・オヴ・ビーイング・アイドル」。複雑なメロディーにノエルのファルセットが響く。なんか歌謡ポップスのような趣を感じてしまったのは私だけ?でも癖になりそうな曲だ。続いて僅か1分40秒足らずのアコギ主体のオアシス流パンク・ナンバー「ミーニング・オヴ・ソウル」、最高だ。そして、次からはゆったりとしたアシッド系ナンバーにシフト・チェンジ。リアム曲「ゲス・ゴッド・シンクス・アイム・アベル」は、アシッド・フォーク調のシンプルにしてグッド・メロディーが冴えるナンバー。こういう曲で聴くリアムの声は、やっぱりずば抜けている。8曲目「パート・オヴ・ザ・キュー」はワルツのリズムに乗ってノエル・ヴォーカル&ギターが歌いまくり。サイケなフレイヴァーもそこかしこに散りばめられた秀逸な曲である。「キープ・ザ・ドリーム・アライヴ」はアンディの曲なのだが、これまた大合唱確実の名曲。広大な地平を見渡すがごとく広がり続けるバンド・アンサンブルに昇天必至。そして唯一のゲムの曲「ベル・ウィル・リング」は、オアシスらしいギターが掻き鳴らされるシンプルなロック・ナンバー。そしてオリジナルではラストとなる「レット・ゼア・ビー・ラヴ」。過去の名曲達を引き合いに出しても全く引けを取らない傑作。リアムとノエルのヴォーカルの掛け合いも最高。因みにノエル作曲、流石です。
 ここまで読んで頂いて少しは伝わっただろうか。とにかくとんでもない完成度なのである。今作を評する時によく『モーニング・グローリー』が引き合いに出されるが、それも納得の名曲揃い。サウンド・ウォールと言われたあのギターもあくまで「歌」を届かせるためにエッセンスとして鳴っている。新たな10年を踏み出したオアシスはやっぱり無敵だった。今年の夏はきっと凄い事になる。

Text by 中野智人(向ヶ丘ダイエー店)

『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』
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SMJI
発売中
CD
EICP-515
¥2,520(税込)

やっぱ凄いね、オアシスは。本当に捨て曲なし。ここまで堂々としたアルバムを作ってくるとは脱帽。今回は全体的にアコースティックな感触が強い。2ndアルバムと比較されるのはそういう部分もあるからかも。日本盤にはボーナス・トラック2曲収録。初回のみピクチャー・レーベル仕様。

【オアシス 日本公式サイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/Oasis/

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