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佐野元春-A.jpg 「僕がこの曲を書いたのは20歳そこそこの頃でした。その時は10代の「いつかきっと…」という思い、20代の「いつかきっと…」という思いを込めてこの曲を書きました。そしてこの曲はレコードになり、みんなはこの曲を聴いてくれて、僕達はツアーに出てこの曲を何十回となく、何百回となく舞台で歌ってきました。そうするうちに僕も年齢を経て、30代には30代の「いつかきっと…」という思いが、40代には40代の、50代には50代の「いつかきっと…」という思いがあるんじゃないかと、最近そう思い始めている。そして何よりも、僕は希望についての歌を歌いたい」…これは2005年2月20日、東京NHKホールで行われた「THE SUN TOUR 2004-2005」最終日で、「サムデイ」を歌う直前に発せられた佐野元春の言葉だ。恐らく佐野元春のファンにはいくつかの世代が存在する。初期のルイード時代から追いかけてたオールド・ファン。僕らのような「サムデイ」や『NIAGARA TRIANGLE VOL.2』を大きな契機として彼の音楽に入っていった世代。そして例えばシングル「約束の橋」で知った世代や、HOBO KING BANDになってからはまったファンも多いだろう。しかしそんな世代を超えてファンと同じ空間と熱を共有できるアーティストは、意外と少ない。そういう意味でも佐野元春は貴重な存在であり、唯一無二のロック・アーティストだと断言できる。
 彼の新作映像が完成した。しかも2枚組で2時間半近くの充実作だ。タイトルは『THE SUN LIVE & RECORDINGS』。これが示すとおり、彼の最新アルバム『THE SUN』を中心としたライヴと、アルバムのレコーディング風景やインタヴューなどで構成された、文字通り『THE SUN』を更に深く楽しむための究極のアイテムとなっている。DISC 1には『THE SUN』収録曲のライヴ(前出のNHKホールでのツアー最終日の模様)を中心に、またDISC 2にはHOBO KING BANDのメンバーの証言や、「レイナ」「遠い声」「恋しいわが家」のミュージック・クリップ、2001年〜2003年のライヴ映像も盛り込まれ、しかも「BACK TO THE STREET」「インディヴィジュアリスト」そして「サムデイ」といったオールド・ファンにも嬉しい楽曲も目白押しだ。またその他にも2001年2月のレコーディング・セッションの模様など、普段ファンが目にすることが出来ない制作過程を追った貴重な映像も含まれ、アルバム『THE SUN』とそのツアーにパワーを注いだ佐野元春の姿が改めて浮き彫りになる仕上がりとなっている。
 昨年は自身のレーベルの創設、そして『THE SUN』のリリース、ツアーと忙しく駆けぬけてきた佐野元春だったが、その軌跡を改めて本作を通じて確認しながら、今後の彼を占ってみるのもまた一興だろう。「いつかきっと…」という思い、そして冒険と探求の心…この気持ちが生き続けた作品をリリースする限り、佐野元春は大丈夫だ。と同時に、僕らも「いつかきっと…」という思いは決して失いたくはない。この気持ちがある限り、僕らもきっと走り続けていけるはずだ。

Text by 土橋一夫(編集部)
(初出『Groovin'』2005年6月25日号)

佐野元春『THE SUN LIVE & RECORDINGS』
佐野元春-J.jpg

DaisyMusic
発売中
DVD(2枚組)+写真集
POBE-3800〜1
¥5,800(税込)

2005年2月20日、東京NHKホールで行われた「THE SUN TOUR 2004-2005」最終日の模様を中心に、アルバム『THE SUN』のレコーディングの様子やインタヴューなどで構成された、文字通り『THE SUN』を更に深く楽しむための究極のアイテム。撮り下ろしのクリップ3曲も収録された充実の内容だ。監督は林渉。ライヴ写真集付き豪華パッケージも魅力的。


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