坂本龍一

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坂本龍一

坂本龍一の重要なキャリアのひとつである映画音楽…。
その輝かしい経歴に、またひとつ名作が加わった!
カンヌを騒がせた15歳の名優、柳楽優弥の最新作「星になった少年」の美しき音世界をご堪能あれ。

(初出『Groovin'』2005年7月25日号)

坂本龍一-A.jpg "日本を代表する音楽家"で真っ先に思い浮かぶのはやはりこの人、坂本龍一。常に時代の一歩先を見据える感覚はもちろん、実験性に富んだアカデミックな作風は国際的に高い評価を得ており、世界規模のビッグ・プロジェクトも数多い。中でも、1992年のバルセロナ・オリンピックでは、開会式のテーマ曲を作曲&指揮し、大きな注目を集めた。そんな"世界のサカモト"は、国内外の気鋭アーティストとのコラボレーションも盛んで、古くは忌野清志郎やデヴィッド・シルビアンに始まり、アート・リンゼイ、タルヴィン・シン、ボサノヴァ・アーティストのジャキス&バウラ・モレレンバウム、韓国人ラッパーのMCスナイパー、映像作家の原田大三郎、更にはお笑いのダウンタウンに至るまで、多彩な顔ぶれとの共演が印象深い。今夏に行われる10年振りとなるバンド編成でのツアーでは、ラップトップ・ミュージックに大きな影響を与えたクリスチャン・フェネスや、元JAPANのスティーヴ・ジャンセン、スク—リ・スベリッソン、そして小山田圭吾といった一癖ある個性派を迎え、"環境コンシャス"をテーマにエコなライフスタイルを提案。斬新なパフォーマンスが話題を呼ぶことは必至だ。刺激的なミュージシャンたちと共に次々と繰り広げられる飽くなき挑戦。一貫して変わることのないそのフレキシブルな姿勢は、いつも私たちに音楽の限りない可能性を見せてくれる。
 更には世界を舞台に活躍し続ける教授こと坂本龍一にとって、重要なキャリアのひとつとなっているのが"映画音楽"。"戦メリ"として広く愛され続けている、1983年の「戦場のメリークリスマス」を始め、アカデミー賞オリジナル作曲賞を受賞した1987年の「ラストエンペラー」、その「ラストエンペラー」のベルナルド・ベルトルッチ監督と再びタッグを組んだ1991年の「シェルタリング・スカイ」、今なおカルト的な人気を誇るアニメ映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」等、これまでに数々の映画音楽を手掛け、世界中から熱烈な支持を得ている。そして、その輝かしい経歴にまた新たな名作が加わることとなった。昨年のカンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀男優賞に輝いた15歳の名優、柳楽優弥の最新主演作「星になった少年」がそれである。感動の実話に基づいた今作で、柳楽はゾウ使いの少年を熱演。センシティヴな演技にますます磨きがかかり、唯一無二の存在感を発揮している。今最もホットな若き天才俳優と世界のサカモト…なんとも興味をそそる顔合わせではないか。
 教授が国内映画の音楽を担当するのは、"戦メリ"の大島 渚監督の「御法度〜GOHATTO〜」以来、約6年振り。「星になった少年」のサントラでは、シンプルなピアノ・ソロから民族楽器を効果的に使ったものまで、それぞれのシーンが蘇ってくるような楽曲が並ぶが、やはりエンドロール曲とテーマ曲は格別だ。オリエンタリズムに溢れた独特のメロディーと緻密な音構築は、まさに教授の真骨頂といったところ。壮大でありながら郷愁感をそそるそのサウンドからは、映画の舞台であるタイの瑞々しい空気がそのまま伝わってくる。
 今秋には、前作『/04』に続く新録音によるピアノ・ベスト盤『/05』の発売も控えている教授。これからも粛々と音楽の地平を切り開いてくれることだろう。

Text by 池 佐和子

『星になった少年 〜Shining Boy&Little Randy〜』
坂本龍一-J.jpg



ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
CD
WPCL-10201
¥2,900(税込)

カンヌを騒がせた天才少年、柳楽優弥の最新主演作「星になった少年」のサントラ盤。数々の良質な映画音楽を手掛けてきた坂本龍一が担当。オリエンタリズムに溢れた独特のメロディーと緻密な音構築は、まさに教授の真骨頂。壮大かつノスタルジックなそのサウンドは鳥肌モノだ!

【坂本龍一 公式サイト】http://www.sitesakamoto.com/

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