ZARD

記念すべき初のコンサート・ツアーを経て、更なる飛躍を遂げたZARD。
1年8ヶ月振りとなる待望のニュー・アルバム『君とのDistance』では、
より深みを増した坂井泉水の世界観が心に沁みる！

（初出『Groovin'』2005年8月25日号）

　昨年行われた記念すべき初のコンサート・ツアー"What a beautiful moment Tour"。総勢17名のサポート・メンバーを得て、デビュー時からこだわり続けてきたという"ウォール・オブ・サウンド"を再現した圧巻のステージが全9会場11公演という規模で繰り広げられた。長い間待ちわびた"生の歌声"にオーディエンスは熱狂。従来の殻を打ち破ったとも言えるその姿勢は、各メディアからも大きな注目を集めた。また、このツアーの模様を収録したDVDも先日リリースされ、シーンの話題を独占。ライヴ本編はもちろん、坂井泉水の素顔が垣間見られる貴重なオフショット映像も満載のこの作品は、ライヴに行った人も行けなかった人もすべてのファンに新たな感動をもたらしてくれている。
　そんな興奮が冷めやらぬ中、ニュー・アルバム発売という嬉しいニュースが届いた。タイトルは『君とのDistance』。ロング・セラーとなった『止まっていた時計が今動き出した』以来、約1年8ヶ月振りとなる11枚目のオリジナル・アルバムである。シングルTOP10入り通算38作（女性ヴォーカル・アーティストとしては歴代1位！記録更新中）という快挙を成し遂げた最新両A面シングル「星のかがやきよ/夏を待つセイル（帆）のように」の2曲を始め、月桂冠"月"のCMソングとしてお馴染みの「今日はゆっくり話そう」、TBS系ヴァラエティ番組「恋するハニカミ！」のテーマ・ソング「かけがえのないもの」といったヒット・ナンバーを含むヴォリューム感溢れる力作だ。また作家陣には大野愛果や徳永暁人など、長年活動を共にしZARDのキャリアには欠かせない存在となった最強の顔ぶれが並び、お互いを知り尽くした間柄ならではの抜群の"安定感"は、今作のセールス・ポイントのひとつと言えるだろう。もちろん全作詞は坂井泉水が手掛けており、その優しさと力強さが同居するポジティヴな世界観は、リスナーの心を捉えて離さない。終わる間際の恋愛をモチーフに"風の中で/もっと強い/女になりたい"と歌う「サヨナラまでのディスタンス」、最高のパートナーと巡り合えた幸福感を"あなたと共に生きていく/小さな幸せ抱きしめ/切ない痛みさえも/分かち合えるから"と綴る「あなたと共に生きていく」（テレサ・テンへの提供作のセルフ・カヴァー）、始まったばかりの恋愛に右往左往する様を"いつだって君のペースになっちゃう/焼きもち焼いたり何かと気掛かりになる"と可愛らしい言葉で表現した「good-night sweetheart」等、揺れ動く心の機微を鮮やかに描き出したナンバーの数々は、スッと胸に染み入り、ハッピーな気分を運んでくれる。忙しい日常で気持ちがささくれてしまった人には、迷わずこのアルバムをお勧めしたい。
　鮮烈なデビューから早14年。坂井泉水の世界観は、様々なアーティスト活動や経験を通して、ますます深みを増しているようだ。これからも、元気と勇気を与えてくれる作品を私たちに届け続けてくれることだろう。

Text by 池 佐和子