長渕 剛

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長渕 剛

袋小路に迷い込み、それでも表通りに駆け出そうともがいている青春たちに贈る…。
ギチギチと牙を噛み鳴らす長渕 剛の魂と、あなたは対峙する覚悟はあるか?
これは音楽体験の形を借りた1人の男の実人生である!!

(初出『Groovin'』2005年10月25日号)

長渕 剛-A.jpg あれは忘れもしない15歳の冬、志望高校の合格発表を見に行った日の事。掲示板に自分の番号が無いことを確認した途端、ホワイト・アウトした僕の頭の中では、長渕 剛の「Good by 青春」の始めの一節がグルグルと回り続けていた…。その後どう歩いて駅まで辿り着いたのか定かではないが、ただ呪文のように「グッバイ青春、グッバイ青春…」とうわ言のように繰り返していたことだけは憶えている。ともかく、共学高校でのバラ色の高校生活の夢は脆くも崩れ去り、やがて僕は暗黒の男子校生活に突入することとなる。その怨念たるや凄まじく、本来婦女子に向けられるべき情熱を音楽と映画に向けた結果、今ではその知識で禄を食むことになったのだから、人生とはわからないものだ(閑話休題…)。
 この度、長渕 剛が新たなベスト・アルバムを発表した。今までにも彼は、アコースティックによるカヴァーを含め数種類のベスト盤を発表しているが、今回の作品は今までとは趣が若干異なっているようだ。実のところ、僕はここ10年彼の音楽から身を引いていたと告白せねばなるまい。にも拘わらず、今回奇縁を得てこのベスト盤を諸兄よりも一足早く聴くこととなった。そして10年ぶりに身を入れて聴く彼の作品に、僕は文字通り打ちのめされてしまった。
 聴く者にこれほどのエネルギーを要求する作品を僕は知らない。1曲目「JAPAN」から最終曲の「Myself」を聴き終わるまで、僕はまるで彼の人生の苦悶を追体験したかのような気持ちになってしまった。これは凄いことだと思う。普通ベスト盤といえば、ヒット曲や代表曲を網羅したファン・サービス、もしくは初心者向けという意味合いで作られることが多い。しかし長渕 剛は敢えてこのアルバムで初心者に向け突き放す。そうすることで今回のアルバムが非常にコンセプチュアルな選曲であることを宣言している。80年代後半から90年代、そして現在にいたるまで、彼が訴えてきたものがこのアルバムの根底には流れているのだ。それは我々そのものであり原点である「日本人」もしくは「日本」というものであり、そこに在る人生を「怒り」「憎しみ」「哀しみ」「優しさ」「慈しみ」といった様々な感情から読み解くという作業であった。その集大成ともいえる作品が、このベスト・アルバム『YAMATO』なのではあるまいか。シングル・ヒットした「しあわせになろうよ」などを散りばめたアルバムをリリースするという、当たり前だと思われる事を大きく裏切ってくれる。
 単なる寄せ集めではなく、明確な目的意識によって選ばれた楽曲は、BGMとして聴き流されるものではなく、聴き手に対峙する事を求める。「お前は何者か?何を成すべく生まれたのか?」と…。あの日の青春達を失い、垢にまみれていないかと問いかける。長渕 剛が他の多くのアーティストと全く違う事は確かだ。音楽の力を信じ、使い捨てに出来ないメッセージを明日に向かって唄い続けている。まさに正々堂々とぶつかって聴く音楽だと思う。最後に追記として、このアルバムをより楽しむために詩人・高村光太郎の詩集を一読されることをお薦めしたい。きっと新たな発見があるはずだから。

Text by 栗原 淳(鎌倉深沢店)

『YAMATO』
長渕 剛-J.jpg



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熱き魂の漢、長渕 剛のベスト盤が2枚組に加え、PV2曲とメイキングを収録したDVDも付いて登場!! 映画「男たちの大和/YAMATO」の主題歌「CLOSE YOUR EYES」を含む全24曲のヴォリュームは、聴く者に恐るべきエネルギーを要求する。あなたはこのパワーを受け止められるか!?

【長渕 剛 OFFICIAL WEB SITE「LIVE ON」】http://www.nagabuchi.or.jp/

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