平原綾香

ARTIST PICK UP

平原綾香

シンガー・平原綾香の魅力を堪能できる、時代を超え、世代をも超える名曲集。
"平原綾香であの曲を聴きたい"という多くのリクエストに応えるべく
企画された至極の全11曲。待望のリリース!

(初出『Groovin'』2005年10月25日号)

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 もはや記憶にも記録にも残る1曲となった感のある平原綾香の「Jupiter」。その曲が元々多くの人に愛されるクラシック・スタンダードだったこと、そこに日本語の詞が乗るという斬新さはもとより、平原のシンガーとしての存在感が大衆を惹きつけたのだということも忘れてはならない。以降、オリジナル作もコンスタントにリリース。順調な活動を続ける彼女ではあるが、デビュー以来、ライヴやテレビの音楽番組でカヴァー曲を歌う度に、リスナーからの問い合わせが殺到するという現象が起きていた。彼女は決してカヴァー歌手ではない。だが"平原綾香の歌唱であの曲を聴きたい"というリクエストが起こることは、何より彼女の繊細かつ豊かな歌声に魅せられた人々が数多く存在した結果ゆえのことだろう。その熱烈な要望に応えるべく企画されたのが今回のニュー・アルバムだ。
 実に300曲を超える中から選曲され、収録されたという全11曲。本作では日本のポップスに限定して、「Jupiter」同様、時代も世代も超えて愛される選りすぐりの楽曲が集められた。平原独特の深遠な歌声がいちだんと際立つ、"陰影があり、かつ歌い上げないバラード"が中心となっている。弦、管、そしてピアノを中心とする生の楽器を軸に、清冽なトーンで統一したサウンド・プロダクションながら、過去にそのオリジナル曲に携わったというそれぞれのアレンジャーが腕を揮い、微妙に異なる背景を描いてゆく。彼女の歌はその中に咲く極彩色の花、そんな様相である。
 収録曲のうち、先行シングルとなった「晩夏(ひとりの季節)」は、1976年に発表された荒井由実のアルバム『14番目の月』に収録されていたナンバー。オリジナル同様、松任谷正隆のプロデュースのもと録音された平原ヴァージョンは、途中に挿入されるサンバ風味がアクセントとなり、なんとも斬新な解釈がなされた。揺らぎのサウンド、その深く低いところを這うような、あの最も特徴的かつ魅力的な平原ヴォイスが存分に堪能できる。一方、同シングルで両A面となった「いのちの名前」は、平原自身が収録を切望したという、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」のテーマ曲。プロデュースはジブリ作品といえばこの人、久石譲だ。ピアノ演奏と歌唱だけというシンプルな体裁が生む、そこはかとない緊張感の中、歌声はどこまでも伸びやかで優しい。その他の収録曲も見逃せない。"落ちては溶け"雪のごとく、時に消え入りそうに繊細な歌声で歌われる「なごり雪」、原曲とはガラリ趣きを変え、クールな洗練をまとった「秋桜」。リズミカルで意外性のあるアレンジで聴かせる「TRUE LOVE」、アコースティックな佇まいと風のようなコーラスが印象的な「言葉にできない」の2曲は同じ佐橋佳幸がプロデュースを手がけている。
 原曲の良さは言うまでもないが、古さを全く感じさせないアレンジと、強い吸引力をもち深い余韻を残す彼女の歌、そのすべてが幸福な出会いを果たした新味溢れる11曲。平原はこの作品でまたシンガーとしての真価を発揮したのはもちろん、その歌を通して曲の素晴らしさを改めて世の中に認知させるという、重要な橋渡し的任務も全うした。

Text by 篠原美江

『From To』
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Dreamusic
11月2日発売
CD
MUCD-1131
¥3,045(税込)

ユーミンの名曲「晩夏(ひとりの季節)」、映画「千と千尋の神隠し」テーマ曲をはじめとするジャパニーズ・ポップスの名曲を、熱烈なリクエストに応えて平原綾香がカヴァー。荘厳にして繊細な彼女の歌声を際立たせる秀逸なトラックにも要注目。初回生産分はスリーブケース付。

※写真は左が[初回盤]、右が[通常盤]です。

【平原綾香 オフィシャルサイト】http://www.ayaka-hirahara.com/

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