サンタナ

ARTIST PICK UP

サンタナ

『スーパーナチュラル』で始まった壮大なコラボレーション3部作、ここに極まれり。
大物アーティストを見事に抱擁するカルロス・サンタナのサウンド…。
音楽巡礼の旅を経て、彼は神になった。

(初出『Groovin'』2005年10月25日号)

サンタナ-A.jpg 先日、カズこと三浦知良の豪州への移籍がニュースになった。あるテレビ番組でのインタヴューで、38歳になってなお現役にこだわり挑戦し続けるというバイタリティの根源には、やはり海外移籍の先駆者であり日本サッカーをこれまで牽引してきた自負があるからなのか?というような問いに対し、カズは「そんなプレッシャーはもうない。若い選手も伸びてるし、今は楽しんでますよ」というようなコメントをしていた。この達観した境地、全く気負いのないスタンスには説明し難いなんともいえない魅力がある。一線から"降りた"というのではなく、"上りきった"という感じである。
 ところでここ数ヶ月、そういう"上りきった"オヤジ達の作品リリースが頻発している。ストーンズやクラプトン、ポール・マッカートニーなどである。彼らの作品を評して「原点回帰」と言ってしまえばそこまでである。しかし、自分たちがシーンに踊らされることなく、やっていて気持ちいい音楽をやろうという姿勢で臨んだら結局こうなった、という事だとすれば、そこに肩の力が抜けた確固たる安定感とキャパシティが生まれ、我々に"癒し"ともいえる心地よさを与えてくれるものとなって現れる。
 そしてサンタナのリリースである。孤高のギタリスト、カルロス・サンタナは58歳。デビューから35年を経て、ラテン・ロックの先駆者としてシーンを牽引し続け、昨年グラミー賞を受賞したロス・ロンリー・ボーイズという、およそ自身の後継者ともいえる存在も出てきたこの状態は、言ってみればカズの境地でもある。今作は、グラミー賞9部門を受賞した『スーパーナチュラル』(1999)、『シャーマン』(2002)に続く大物アーティストとのコラボレーション・アルバム第3弾であり、その集大成ともいえるアルバムである。思えば、自ら"音楽巡礼の旅"と言い放ち、ローリン・ヒルやロブ・トーマスなど、当時の先端であったアーティストたちの懐に飛び込んでいった第1弾(シングル「スムーズ」が全米1位を10週以上獲得、アルバムもチャートの1位と商業的にも驚異的)、当時若手のミシェル・ブランチから、ドミンゴのような異業種とまでコラボしている第2弾である。どのアーティストとやっても、相手の音楽性には敬意を払ってはいるものの、結局それも自分の中に取り込んでしまい、みんなサンタナ・ファミリーにしてしまった感もある。これはまさに達観した者のみが持つ器であり、"上がりきった者"の成せる業である。
 今作のタイトル『オール・ザット・アイ・アム』。両手を広げて「さあ、私にすべてを解放しなさい」とでも言わんばかりの神々しさである。ちなみに(と言ってはナンですが)今回の参加アーティストも前出のロス・ロンリー・ボーイズに加え、スティーヴン・タイラー、メアリー・J.ブライジ、ビッグ・ボーイ、ショーン・ポール&ジョス・ストーン、ウィル・アイ・アム、ミシェル・ブランチ&ザ・レッカーズ、アンソニー・ハミルトンにロバート・ランドルフ、さらには、カーク・ハメット等、前2作以上の豪華さである。この第3弾を節目とするのかは分からないが、少なくともひとつの完成形が表現されるのは間違いない。そしてあなたもサンタナ・ファミリーになるはず。

Text by 松本真一(小田原なるだ店)

『オール・ザット・アイ・アム』
サンタナ-J.jpg




BMG JAPAN
11月9日発売
CD
BVCP-21424
¥2,548(税込)

グラミー賞9部門を受賞し、"奇跡のアルバム"と称された『スーパーナチュラル』、そしてそれを超えるスケールで制作された『シャーマン』は、全世界で3,000万枚のセールスを記録。そして破格のスケールで繰り広げられるコラボレーション・アルバム第3弾は、まさに3部作の完成形に相応しい強力アルバム。 

【サンタナ 日本オフィシャルサイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/SR/Santana/

inserted by FC2 system