くるり

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くるり

日記を綴るように、日常は流れ、シンプルなメロディーが流れ出す。
きっと僕らはまた1つ、かけがえのない大事なものを手に入れるだろう。
くるり、最高傑作!本当に!

(初出『Groovin'』2005年11月25日号)

くるり-A.jpg ファースト・シングル「東京」の衝撃は、今も記憶に鮮明だ。基本的に洋楽しか聴かないような人達(筆者もその1人)にもその抗いがたいメロディーの艶やかさ、日本の街並みが思い浮かぶような文学性の高い歌詞で深く切り込み、高い評価と人気を獲得した。その後も「さよならストレンジャー」を経て、ロックに大きく触れた『図鑑』、スマッシュ・ヒットとなった「ばらの花」を含む『TEAM ROCK』、出世作にして名盤『THE WORLD IS MINE』、名曲「ハイウェイ」を収録した『ジョゼと虎と魚たち』のサントラと、秀作を次々とリリース。また昨年には傑作の誉れ高い『アンテナ』をドロップ。強力なドラム・セット・プレイヤー、クリストファー・マグワイアを擁し、プログレ的とも言える万華鏡のようなサウンド・スケープを創り出した。これだけ多彩な音像を日本のポップ・フィールドに落とし込み大きな評価を得た事は、その時点でのリアル・ロックの頂点とも言えるアルバムであった事の証明ではないだろうか。
 そんな傑作中の傑作から1年8ヶ月、早くも、って言っても差し支えないくらいのハイ・ペースでアルバムが完成してしまった。確かにその前振りはこれでもか、と言わんばかりに、しかも作品のリリースという形で表明されていた。今年に入ってからのシングル・リリースは4枚!その間にSINGER SONGERとしてのリリースも挟んでいるのだから、その創作意欲たるやとんでもない。
 そんでもってニュー・アルバム『NIKKI』である。前作があらゆる実験性をはらんだ作品、くるりの集大成的なアルバムだとしたら、今作は耳に直接飛び込んでくるメロディーの豊かさが前面に出たアルバムで、いい意味での原点回帰作である。まあ、そんな事言わなくても激キャッチーな名曲シングル群「Birthday」「Superstar」「赤い電車」「Baby I Love You」が1枚のアルバムに入っているというこの強力な布陣だけで超名盤決定!な訳なのだが。シンプルなメロディー・ラインに紡がれる朴訥とした文学性の高い歌詞という、くるりの代名詞である特質が高いレベルで結実した秀逸なトラックばかりが並ぶ本当にものすごい作品である。シンプルでいて一発で耳に残る強力なメロディー・ライン。ロックン・ロールもミディアム・バラッドもその歌の力が体の芯に響き渡っていく。歌詞にしてもタイトル通り、まるで日記のようなありきたりな日常の心象風景を切り取りながら、心の襞に触れえる繊細な筆致がメロディーを増幅させる。岸田のソング・ライティングは本当に神がかってきた感がある。レコーディングもイギリス/ロンドンのフルヴィンテージ機材の並ぶスタジオとアメリカ/マサチューセッツ郊外の大自然の中のスタジオで行われたという。このこだわりが繊細で温かみのある、しかも太くソリッドな音像を生んでいるのだろう。
 今作は本当に多くの人に聴いてもらいたい。これだけのポテンシャルを秘めているアルバムであるから、私ごときがそんな事を言わなくてもきっとあらゆる人の耳に届くことだろうけど。この名曲群が広く聴かれる事で、日本のポップ・フィールドはまたひとつリアルな音を手に入れる。そんなことを願って。

Text by 中野智人(茅ヶ崎サティ店)

『NIKKI』
くるり-J.jpg




ビクターエンタテインメント
発売中
CD
[初回盤]DVD付 VIZL-156 ¥3,500(税込)
[通常盤]VICL-61770 ¥3,045(税込)

まさに珠玉のロック・アルバム。このメロディーには誰も抗えないと思う。音選びもさすがの一言に尽きる。ヴィンテージな気持ちの良いギターの歪み、ソリッドなベース・ライン、軽やかなドラム・アンサンブル。本当、最高。初回盤はシングル4曲のPVを収録したDVD付。

【くるり ON WEB】http://www.quruli.net/

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