一青 窈

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一青 窈

大切な「君」、そして「あなた」へ。
"出会えたこと"、そして"今"に「ありがと」。
1年8ヶ月ぶりとなる最新アルバムは、これまで以上に、愛に溢れた作品。

(初出『Groovin'』2005年12月25日号)

一青窈-A.jpg ずいぶんと久しぶりな気がする。前作アルバム『一青想(ひとおもい)』が昨年の4月発売だから、アルバムとしては1年8ヶ月ぶりだ。昨年は12月にライヴ映像が発売されたが、それ以外のリリースはというと、2月のシングル「ハナミズキ」のみ。しかしながらこの「ハナミズキ」は、今や説明不要なほどのとても大きな作品になったし、彼女自身も本作を携えて、昨年から今年にかけては数々のイヴェントやライヴに出演、さらに昨年は初の主演映画「珈琲時光」も公開され、表現者としてのさまざまな" 一青 窈"の姿を目にすることができたことも、実に喜ばしいことだった。そんな数々の活動の中、今年7月に"つま恋"で行われた"ap bank fes' 05"に参加したことがきっかけとなり、小林武史との共作である8thシングル「指切り」が生まれた。一見すると極めて日本的で、けれどその中にちらりと覗かせる異国的な趣のようなものが何より一青 窈の魅力だが、この「指切り」はそんな彼女らしさを活かしながら、いっそうその世界観が掘り下げられた深みのある作品で、まさに"一期一会"という言葉さえも強く実感させられるものだった。
 そんな風に昨年から今年にかけて、あらゆる場所でいろんなものを吸収し、よりいっそう表現者としての幅を広げた一青 窈が送り出す最新アルバムのタイトルは『&』。一青 窈とその音楽を思い浮かべる時、どちらかというと漢字や平仮名のイメージが強いだけに、とても新鮮な印象だ。「&」は前後の言葉を繋ぐもの。では今作の「&」は、何と何を繋いでいるのだろう?
 アルバムとしては3枚目となる今作だが、これまでのアルバムに比べて、誰かを強く思う気持ちや愛情に溢れた曲が多く収録されているように思った。例えば愛しい人がいて、幸せで、これから先もずっとこのままでいたいと思う。けれど未来に保証は無い。そう考えると不安になる。でも何より"今"この時を大切にして、どんな未来にも笑顔で向かっていきたい。そう思いながら進んでいこうとする意志の強さが、どの曲にも一貫して表されている。「あなた」や「君」といった呼び方で表される対象は、常に深く愛すべき存在で、そんな「あなた」や「君」を思う「あたし」や「僕」もまた、常にいっぱいの愛に包まれている。彼女自身が何よりそのことを自覚して常に感謝をしているからこそ、聴き手の心の奥にまで強く響く、数多くの名曲を生み出すことができるのだろう。
 さらに、今作に収録されている曲のほとんどが、ゆったりとしたナンバーであることにも注目したい。彼女の作る歌詞には、言葉本来の美しさや言葉遊びの面白さなど、読めば読むほど新しい発見や感動が多くあるが、それをゆったりとしたメロディーによってよりじっくりと味わえる今作は、これまで以上に一青 窈の世界を堪能できるものとなっている。彼女の紡ぐ言葉、その歌声、描く世界に、すでに魅了されている人はもちろんのこと、例えば今、すごく大切に思っている人がいたり、何か強く打ち込むものがあって、一生懸命それに向かっている人にもぜひ聴いてもらいたいアルバムだ。
 今作の「&」が繋ぐもの。それは今作を聴いているあなた自身と、あなたが大切に思う誰か(何か)だ。「繋がっている」…そう思うだけで気持ちを強く持つことができる。一青 窈ならではの愛情がいっぱいに溢れた最新作『&』は、それを強く実感させてくれる作品だ。

Text by 二宮万里(編集部)

『&』
一青窈-J.jpg




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前作『一青想(ひとおもい)』から1年8ヶ月ぶりの最新アルバム。昨年から今年にかけて、映画初主演、さまざまなイヴェントやライヴへの参加など、よりいっそう表現者としての幅を広げた一青 窈の"今"と、彼女ならではの愛情がいっぱいに溢れた作品。DVDには収録シングル3曲のPVと「ハナミズキ」のライヴ映像を収録。

【一青 窈 OFFICIAL SITE】http://www.hitotoyo.ne.jp/

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