ウルフルズ

ARTIST PICK UP

ウルフルズ

あの「バンザイ」から10年…。
さり気なくも濃い愛が詰まったラヴソングが12曲収録された
"ラヴソング・アルバム"『YOU』、満を持してリリース!

(初出『Groovin'』2006年2月25日号)

ウルフルズーA.jpg ここにきてウルフルズが元気だ。いやずっと元気だったが、ますます元気だ。『暴れだす』以来1年振りのシングル『サムライソウル』と、メガヒット・アルバム『バンザイ』発売から10周年を記念したスペシャル・アイテム『バンザイ〜10th Anniversary Edition〜』を1月25日に同時リリースし、3月8日には10枚目のアルバム『YOU』をリリースする。
 あの「バンザイ」からもう10年か…という感慨は置いといて、「サムライソウル」はトータス松本の硬軟のヴァランスがとれた本当に良い曲だった。男気溢れるラヴソングという意味では「バンザイ」と同じコンセプトだが、歌の主人公がちゃんと10年分成長しているところがミソだ。若さの暴走を感じた「バンザイ」に対して「サムライソウル」では不器用な40男の風格がちゃんと備わっている。そう、トータス松本は1966年生まれというから今年で40歳になる。2月7日にも1966年生まれのアーティスト達が同じステージに集った「ROOTS 66」というイヴェントがあったが、この世代が頑張ってくれているという事実は少しばかり下にあたる僕らの世代にはものすごく心強いし、嬉しい。というのも、音楽的にみても60年代生まれのこの世代が、60年代〜70年代というロック/ソウルの黄金期の影響を受けることができた最後の世代だという気がするからだ。もちろん、彼等にしてみても60年代をリアルタイムで過ごせはしなかったが、濃厚な時代の残響みたいなものを肌で感じながら育んだ感性には、アットランダムにつまみ食いしながら獲得したミクスチャー感覚で勝負する若い世代にはない"こってりとした濃さ"がある。
 ウルフルズの音楽も濃いと思う。もちろん大阪人としての地域性の濃さや、性格やキャラクターとしての濃さもあるが、音楽的にも十分濃い。トータス松本が3年前に出したソロ・アルバムの濃さは尋常じゃなかったし、前述の10年前のアルバム『バンザイ』にもサーフィン、ロカビリー、ニューオーリンズ、ファンク、サザン・ソウル…など、往年のロック/ソウルの息吹きがそこかしこに感じられた。この濃〜い趣味性に僕などは心底参ってしまったのだ。
 で、新作『YOU』である。このアルバムも相当濃い。例えば「プリプリベイビー」は一番いい頃のRCサクセションを彷佛とさせる完成型ロックン・ロール。歌詞中に登場する、エルヴィスの「You ain't nothin' but a hound dog」を「ゆえになすがまま反動」と翻訳する大瀧詠一的センスも嬉しい。サンコンJr.のドラミングの技(「シング!シング!シング!」におけるジーン・クルーパのドラム・ソロを彷佛とさせると言ったら誉め過ぎか?)が冴える「あふれだす」や、クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」風メロディにボトルネック・スライド奏法をかました「外面キング」、シンプルなアレンジに美しいメロディが映えるバラード「ひとり歩き」など、相変わらず音楽的聴き所は多い。が、本作の一番の魅力は何と言ってもトータス松本の描く詞の世界だろう。「ラヴソング・アルバム」と称されているだけあって全てが男の視線で歌われる愛の歌なのだが、それが10代の明日無くなっているかもしれない恋愛感情ではなく、例えば結婚10年目の夫婦が買い物の帰り道にふとお互いを思いやるような、さり気なくも濃い愛なのだ。そこら辺のニュアンスが一番沁み出ている「39(サンキュー)」という曲のストーリーに胸を熱くするのは僕だけじゃないはずだ。

Text by 高瀬康一(編集部)

『YOU』
ウルフルズ-J.jpg




東芝EMI
3月8日発売
CD
TOCT-25921
¥2,500(税込)

ウルフルズの記念すべき10th ALBUMは収録曲全てがラヴソングという「ラヴソング・アルバム」。先行ラヴソング・シングル「サムライソウル(Album mix)」、iTMS限定配信ラヴソング「ぼくのもの(YOU version)」他、名曲「バンザイ」を発展させたような詞の世界が感動的な全12曲。

【ウルフルズ オフィシャルサイト】http://www.ulfuls.com/

inserted by FC2 system