久保田利伸

「幸せはふと気付くもの、つかむものじゃない…」
デビュー20周年を迎える日本の"Mr. Soul Man"、
久保田利伸の最新作『FOR REAL?』！

（初出『Groovin'』2006年2月25日号）

　いきなり恋愛話で恐縮ですが「気が付いたら好きになっていた…」、他人の恋愛話に首を突っ込むと、こんな台詞が返ってくることがありますよね。突然の出会い、運命の出会い、出会いのパターンってのは様々ありますが、そんなふとした出会いがあって、いろんな会話があって、お互いに心を許せる部分が芽生えて、結果「気が付いたら好きになっていた…」。一般的な響きかもしれませんが、出会い自体が奇跡と感じられたら、それは何よりも素敵なことですよね。また、人を好きになっている時はいつの間にか、カッコよさ、カワイらしさを求めちゃうものですよね。服装、化粧、話し方まで艶っぽくなったりして、またそんな盛り上がり自体が楽しく思えたり…でもよーく考えてみると、人を好きになっていく気持ちの過程の中には、そういった「飾り」が含まれてはいるものの、それはあくまでオプションであり、実際はその人の何気ない仕草や、掛けられた言葉や、いろいろな顔付きを発見するに連れ、なんとなくその気持ちに気付かされていくみたいな。こうした自然な意識の変化を表した美しい日本語こそが"惹かれる"というのではないでしょうか？
　さて、最新アルバム『FOR REAL?』を届けてくれた久保田本人からはこのようなコメントが添えられています。「アルバムを通して伝えようとしているのは、如何に"人間らしくいられるか？"ということなんですよ。人として正しいかどうかということでなく、人間らしさの溢れる匂いのある行動とか、言葉とかクセとか、そういうものを自分がまず大事にして、人にも大事にしてもらおう、みたいな感じと言えば分かって貰えるかな。恋の仕方だって、物の考え方だって全て同じ。僕が送っているのは、勇気を持って、自分に正直に、素のまま、カッコつけずにいようよというメッセージなんです。こういうスタンスが取れるようになったのは、N.Y.に約10年いて、究極のしのぎ合いとか、競争の厳しさとかを体験することで、初めて人としての本当の温かみが分かった結果なんですよ」…うーっ、脱帽……。

Text by 押尾武史（三島店）