MY BEST CHOICE!

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第71回 
伊藤万裕(すみや伊東店 サブ・マネージャー)

(初出『Groovin'』2006年2月25日号)

 ある朝、店の駐車場で草むしりに夢中になり、いつもは見て見ぬ振りをしていた何年も放っておかれたであろう雑草の親方に手を出してしまった時の事です。コンクリートの隙間から這い出ている草と根に悪戦苦闘しながら、正直に言えば、親方の強く健気な姿に心を打たれてしまいました。彼は、水はおろか土さえ与えられない悪条件の中、地上では寒い日には熱を逃さないように葉を縮こまらせ、暖かい日には太陽に自分の存在を主張するかのように葉を揺らしながら、地下では硬いコンクリートを押し上げ年月をかけて根を太くしていたのです。大げさかもしれませんが、「生きる」とはこういうことなのだよと、駐車場の片隅で教えられたように思います。
 このように少しだけ感傷的な気分な時、私はジャック・ジョンソンの『イン・ビトウィーン・ドリームス』を何度も聴きます。ハワイアンとロックが融合した、まるで命の鼓動のような穏やかなリズム、グルーヴィーなアコギの音をあやすジャック・ジョンソンの声、まるで夢の狭間にいるような…ぽかぽかのフトンで眠りにつくその瞬間の、人間の内側で起こる意識と無意識が混沌と行き交う快楽に似たあの波を奏でるアルバムなのです。
 海と暖かい気候の土地で育まれた人間からあふれ出る大らかさと豊かさで甘く語りかけてくる彼は、自分の中の濁った水を浄化しなさい、というのではなく、濁水はむしろ承知せよ、と語りかけてきます。そして、時間をかけて上手に付き合っていくのが、自然に生きることに一番近いことなのだと…。
 ギリギリに立て込んでいる時ではなく、ほろっと気が緩んだ時に必要な癒しの1枚です。

*なお次回は、鈴木篤氏(すみや本社 営業企画部 営業推進グループ)が登場します。お楽しみに。

ジャック・ジョンソン
『イン・ビトウィーン・ドリームス』
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ユニバーサル インターナショナル
発売中
CD
UICU-1085
¥2,548(税込)

サーフ・ロックというジャンルを確立したジャック・ジョンソンの3rdアルバム。本当のサーファーというのは自然のリズムに一番近い所にいるのだなぁ、と思わせる1枚。もちろんサーファーだけでなくロック好きにもお勧めです。

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