HY

1年9ヶ月の沈黙を破り、遂にHY（エイチワイ）のニュー・アルバムが完成！
これまでよりも更に濃く、深く、そして積極的に新たな音楽性を広げた全12曲！
本物の1枚です！

（初出『Groovin'』2006年3月25日号）

PHOTOGRAPHER：G-KEN

　すでに説明不要であろうストリート発の沖縄インディーズ・アーティスト、HY（エイチワイ）。インディーズながらアルバムのミリオン達成や、オリコン・チャート4週連続1位を獲得するなど、とんでもない偉業をなしてきたバンドである。
　そんな彼らが1年9ヶ月の沈黙を破り、遂に4thアルバムを完成！アルバム・タイトルは『Confidence』（コンフィデンス）。それが意味するのは自信、信頼、確信なのだという。そもそも沖縄のストリートで活動していた彼ら。全国的な人気となったきっかけといえば、テレビ朝日のストリート・パフォーマー発掘番組「ストリートファイターズ」で取り上げられたことだろう。私も観ていたが、その時流れていた楽曲「ホワイトビーチ」を聴いた時の衝撃は今でもよく覚えている。凛とした仲宗根泉ののびやかなヴォーカルに一瞬で心を奪われ、翌日には手元にCDがあったほどだ（笑）。シングルも出さず、他のTV番組等の露出がほとんどなかったにも拘わらず、その後に発売したアルバム『Street Story』がいきなり100万枚売れたのは、楽曲の良さがじわじわと口コミで広がったことによる結果だろう。実際『Street Story』の出来は素晴らしかった。新里英之と仲宗根泉の声が互いに絡み合う名曲「AM11:00」をはじめとする、実にヴァリエーションに富んだアルバムだったと思う。
　しかし、彼らはその成功の中でも自分達の実力は本物なのか、ただの沖縄のアーティストのブームに乗っただけなのか？試されている時だとも感じていたようだ。だが、その後に発売されたアルバム『TRUNK』は、蓋を開けてみればチャート2週連続1位という素晴らしい結果を生み、木の幹の意味を持つアルバムの名の通り、HYというをアーティストを完全に確立させるアルバムとなった。また、その年に行われたライヴのチケットは発売瞬時にSOLD OUTになるなど、ファンと一体になって大成功を収めたことによって彼らの得た自信と信頼は、相当なものとなっただろう。
　そして今回完成した『Confidence』というアルバムは、いつもよりも多くの時間をかけ、ひとつひとつの楽曲に思いを込めた渾身のアルバムとなっている。決して力んでというわけではなく、HYというアーティストが本来持っているパワーを自然かつ最大限に出し切っている。それは1曲目の「モノクロ」を聴いただけで感じることが出来た。これまでの自信を糧に、仲間を、ファンを今まで以上に信頼したところから出来たであろうこのとても優しいミディアム・バラードは、誰もが感じたことがあるであろう恋の傷みを蘇らせ、思わず感傷にひたってしまう。が、それだけでなく優しく包んでくれる。この包容力は実にHYらしい、いや、HYにしか出来ない事だと思う。そんな「モノクロ」から始まり、ハイ・テンポな「ポーカーフェイス」や「4WD」「scene」、切ないラヴバラード「canvas」「I JUST DO IT FOR YOU」、ぽかぽかするミディアム・テンポな「あなたにキス」と、様々な楽曲がとても聴き易く並んでいる。今回の楽曲は、まるでモイスチャー・ミルクのような、優しく、滑らかに体に潤いを与えてくれるものばかりだ。聴いていて心地よく、まるで春の木漏れ日のような穏やかな歌声とメロディ、歌詞もとても身近で思わず感情移入してしまうものばかりである。まさにこのアルバムは『Confidence』の名の通り、自信と信頼を以って生み出された確信的な1枚である！

Text by 佐藤和久（矢板店）