NIAGARA TRIANGLE Vol.1/山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一

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ARTIST PICK UP

NIAGARA TRIANGLE Vol.1/山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一

76年にリリースされた名盤が、30周年記念盤としてリマスター。
山下達郎、伊藤銀次、大滝詠一の若き日の個性が集結した
スーパー・セッション・アルバム。これこそ今聴くべき作品だ!

(初出『Groovin'』2006年3月25日号)

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 山下達郎、伊藤銀次、大滝詠一…この3人の名前を挙げれば、恐らく若い世代の音楽ファンでもその作品に触れたことのある方は多いはずだ。それもそのはず、リスナーのみならず現在の日本のミュージック・シーンをリードする様々なアーティスト達にとっても彼らの存在は大きく、ハッキリ言って避けては通れない作品を数多くこの世に送り出してきた、いわば先生格の3人であるからだ。しかし彼らにももちろん、ある種の音楽的修行(もしくは試行錯誤)を重ね、作品を創っていた時期が過去にあった。30年前…ということはこの3人もまだ20歳代、そして若さと創造性、ポジティヴさに溢れていた頃に制作されたこのアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』は、当時の彼らのサウンドに対する志向性や様々な音楽的ルーツがたくさん詰まった、まさに珠玉の1枚と言うことが出来る。ただし、もしかしたら後年の彼らの作品…例えば大滝詠一の『A LONG VACATION』や伊藤銀次の『Baby Blue』、そして山下達郎の『For You』などといった作品のイメージが強い若い世代のリスナー、もしくは後追いで主に彼らの80年代以降の作品を聴き始めたような聴き手にとっては、本作はちょっと異質に感じられるかも知れない。特に大滝作品の歌詞や音頭に代表されるサウンドには、抵抗感を持つ方もおられるかと思う。しかし特に大滝詠一に関しては、『A LONG VACATION』に代表されるメロディアス路線と、「ナイアガラ音頭」に代表されるノヴェルティ・サウンド路線の両方が存在してこそナイアガラ・サウンドということを、敢えて頭に置きながら、本作を聴き進められることをお薦めしたい。
 さて肝心の本作だが、オリジナルは76年3月のリリース。つまり今回のCD化はナイアガラ・レコードでは恒例となったアニヴァーサリー企画でのリイシュー(30周年記念盤)ということになる。元々ココナツ・バンク(伊藤銀次在籍)と、山下達郎や大貫妙子らが在籍したシュガー・ベイブ、そして大滝詠一の3組が交互に作品をリリースしていくという構想からこのレーベルはスタートしたのだが、75年4月にシュガー・ベイブが『SONGS』をリリースしたものの、ココナツ・バンクは作品をリリースせずに解散ということで、実際にレーベルが動き出した75年は『SONGS』と大滝のソロ『NIAGARA MOON』の2枚のアルバムをリリースするにとどまった。 そこで考えられたのがシュガー・ベイブのリーダーの山下達郎と、元ココナツ・バンクのリーダーで当時はバイバイセッションバンドに所属していた伊藤銀次、そして大滝詠一の3人による最後の記念碑的なオムニバス・アルバムだった。初期ナイアガラを支えた3名による本作は、62年に米コルピックスから発表されたジェームス・ダーレン、シェリー・フェブレー、ポール・ピーターセンによる『Teenage Triangle』にヒントを得て、3人がそれぞれの曲を持ち寄り、それぞれ自分の曲はセルフ・プロデュースするというスタイルで制作された、当時としては希有な企画作品と言える。しかも当時ナイアガラのセッションや周辺で活動していた吉田美奈子、坂本龍一、布谷文夫、吉田建、細野晴臣、上原裕、中野督夫といった錚々たるメンバーが参加し、実験色が強いながらも斬新で優れた作品に仕上がっている。
 さて今回のリイシュー盤だが、本編11曲+ボーナス・トラック5曲という構成で、全て大滝詠一自身の手による最新のデジタル・リマスタリングが施され、音質も飛躍的にアップ。95年にCD化されているが、収録内容も若干違い音質もさらに良くなっているので、この盤をお持ちの方も是非今作を購入された方がよいかと思う。なおコア・ファンの方は、M-5の「ココナツ・ホリデイ'76」に注目を。以前のCDではエンディングがフェイド・アウトされ短くなっていたが、今回は7分を超えるオリジナル・ヴァージョンに戻されている。もちろんこの形では初CD化。さらにボーナス・トラックに関して言えば、95年盤にも収録されていた「幸せにさよなら」(シングル・バージョンで3人が交互に歌うもの。伊藤銀次が全編を歌うM-6のアルバム・バージョンとは異なる。MONOミックス)や、そのB面だった山下達郎による「ドリーミング・デイ」(シングル・バージョン/MONOミックス)、布谷文夫の歌う「ナイアガラ音頭」(シングル・バージョン/MONOミックス)に加え、今回初CD化となる「あなたが唄うナイアガラ音頭」(これはシングル「ナイアガラ音頭」のB面に収録されていたカラオケで、MONOミックス。奇声のイントロが面白い!)と、「ココナツ・ホリデイ'76」の奇声部分を抜き出した「ココナツ・ホリディ3日目」が収録されている。特に初めて発表された「ココナツ・ホリディ3日目」は、当時のナイアガラのレコーディング…掛け声などのダビングの様子(布谷文夫、伊藤銀次、上原裕、斎藤ノブ、GH助川が参加)を知ることが出来、ファンには嬉しいプレゼントと言えるだろう。
 3人の若き日の個性が集結したスーパー・セッション・アルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』…今聴いてもその演奏力とアレンジなどの発想力、そしてアイディアの豊富さに驚かされる。30年前にはまだ生まれていなかった、そんな世代にこそじっくり聴いて頂き、是非この中に隠された時代を超越する方法や音楽の秘密を探って欲しいと切に願う。

Text by 土橋一夫(編集部)

『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 30th Anniversary Edition』
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Sony Music Records/NIAGARA
発売中
CD
SRCL-5005
¥2,100(税込)

76年にリリースされた、山下達郎、伊藤銀次、大滝詠一の若き日の個性が集結したスーパー・セッション・アルバムが、30周年を記念して新たにリマスター&ボーナス・トラック収録でリイシュー。初CD化となるトラックもあり、ファンなら要チェック!坂本龍一、吉田美奈子、布谷文夫など錚々たるメンバーも参加。

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