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第72回 
鈴木 篤(すみや本社 営業企画部 営業推進グループ)

(初出『Groovin'』2006年3月25日号)

 こんにちは、鈴木です。32歳になる今でもそうですが、子どもの頃からロックン・ロールやポップ・ミュージックが描く物語に自分自身を重ね合わせ、ある時は身を委ね、ある時は一緒になって叫んだり涙を流したりもしてきました。でも、一方ではそんな物語や意味性を超えたところで思いもよらずヒョイッと飛び込んでくる音楽もあったりするわけです。そういう音楽を前にするとアレコレと言葉をならべるのが無意味にも思えます。ウィトゲンシュタインさんも言ってるように「語りえないことについては、沈黙しなければならない」わけです。
 で、ちょうどそんな表現がピッタリくる感じなのが、例えば4 Heroの『Two Pages』です。1998年に発表されたこのアルバムは、稠密なプログラミングとフィラデルフィア直系の華麗なストリングスで彩られた21世紀のソウル・ミュージック。それ以前からドラムン・ベースやブレイク・ビーツはやたら大好きで聴いてたんですが、このアルバムは決定的でした。文句なし。パーフェクト。気の遠くなるような美しさと同時に獰猛なまでの破壊力。出会うべくして出会った音楽と言えるのかもしれません。今でもブレイク・ビーツは無意識下で直接的にフィットする音楽です。もっと広げるとエレクトロニカやフォークトロニカなんかもそうかな。
 最後に、自戒を込めてもう一度ウィトゲンシュタインさんの言葉から。「凡庸な物書きが気をつけるべきことは、不正確な生の表現を、正確な表現に慌てて置き換えない事である」。文章に限らず音楽でももちろんそうだと思うんですが、不正確ではあってもリアルな表現こそがココロにカラダに響いてくるということ。僕が音楽に求めているのもつまりはそういうことなのです。

*なお次回は、小松一也氏(すみやMEDIA MAX袋井店 サブ・マネージャー)が登場します。お楽しみに。

フォー・ヒーロー
『トゥ・ペイジズ』 
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ユニバーサル インターナショナル
発売中
CD
PHCR-1684
¥2,548(税込)

ドラムンベースというジャンルを代表する4 Heroが1998年に発表した記念碑的アルバム。もはやドラムン・ベースという言葉では括りきれない真にプログレッシヴな音は、21世紀という来るべき未来を描き切った大傑作。全人類必聴。宇宙人にも聴かせたい。

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