福山雅治

収録曲すべてにタイアップの付いた豪華な21thシングルと
DJ/ピストン西沢によるリミックス ベストアルバムが同時発売。
いずれも"メロディ・メーカー"福山雅治の引き出しの多さを再認識できる作品。

（初出『Groovin'』2006年5月25日号）

脱帽だ。またしても脱帽である。「天は二物を与えず」という諺があるが、この人はちょっと与えられ過ぎじゃありませんか？
　いきなり何だ？と思われるかも知れないが、このたび発売された福山雅治の最新作を聴いてまず浮かんだのがこの"脱帽"という言葉なのだ。今回、シングルとリミックス盤が同時発売されるのだが、シングルは一見"両A面"ながら、収録されている4曲すべてタイアップ付き！「milk tea」はTBS系全国ネット『恋するハニカミ！』4〜6月度テーマソング、「美しき花」はパナソニック・ デジタルビデオカメラ「DVD愛情サイズ」CMソング、「LOVE TRAIN」は明治XYLISH朝ガムCMソング、「あの夏も 海も 空も」はサントリー 新「ダイエット〈生〉」CMソング……豪華過ぎる。
　そんな超豪華シングルの1曲目「milk tea」で、すみません、私うっかり泣いてしまいました。これは以前の「Squall」を聴いた時と同じ状態で、そう、あの時同様に"女性詞"の曲。低音の歌声が優しく響くミディアム・バラードなのだが、しかし、なぜここまで女心がわかるんですか？そして"春の持つチカラ"がテーマの「美しき花」は、「桜坂」をも彷彿とさせるような穏やかで力強い曲で、聴いていると前向きな気持ちになれる。ゆったり染み入るナンバーにうっとりしていたら、次なる「LOVE TRAIN」でスコーンと頭をはたかれたような衝撃を受ける。生バンドを従えたアップ・チューンで、煽るような裏打ちのビートに気持ちも逸るゴキゲンなナンバーだ。そして「あの夏も 海も 空も」は打って変わってじっくりと流れ込んでくる壮大なバラードで、頑張っている人の背中をそっと押してくれるような曲……と、4曲でこんなに充実した気持ちになれることにまたびっくり。やはりこの人、ただ者ではない。
　そんな彼の作り出す楽曲には今さら言うまでもないが定評があり、本人が歌うオリジナル以外でも、さまざまな形で彼の作品は私たちの元に届けられてきたが、2003年に「虹」のリミックスを手掛けたDJのピストン西沢によるリミックス ベストアルバムがこの度、シングルと同時発売された。これまでのシングルを中心に選ばれた13曲が新たに生まれ変わっているのだが、「虹」の印象で聴くと目からウロコ状態になることは間違いない。例えば、若手要注目のラッパーである"WISE"が参加した「桜坂〜featuring WISE」。レコーディングに立ち会う前、福山は"ラッパーはみんなマッチョで鎖ジャラジャラ、常に女の子2人ぐらい連れてベントレーとかに乗ってくるもんだ"と思っていたらしい。そんな一見"ジェネレーション・ギャップ"な組み合わせながら、聴けば納得の見事なコラボレーションとなっている。また「HELLO」は、もともと軽快な曲だが今度は夏仕様？ドライヴのBGMで海沿いを走りながら聴いてみたいと思った（できればオープンカーで）。
　……これ以上は聴いてのお楽しみにさせてもらうが、今回発売の2作品とも、改めて"メロディ・メーカー"福山雅治を再認識できる内容となっているので、ぜひ実際に確かめていただきたい。

Text by 二宮万里（編集部）