中島みゆき

ARTIST PICK UP

中島みゆき

「中島みゆき」という才能に共鳴したアーティストたちが綴る11編のドラマ。
新しい解釈に挑むもの、みゆきさんの世界をより掘り下げるもの。
そしてそれに対する、みゆきさんからの回答とは?

(初出『Groovin'』2006年6月25日号)

中島みゆき-A.jpg 今回『元気ですか』という統一タイトルで、みゆきさんの作品を11組のアーティストがカヴァーした作品集と、全曲リマスター、同じ選曲、曲順でのみゆきさんの原曲集が同時発売されました。
 世にカヴァー・アルバムは数々あれど、すべてが名作と呼ばれているわけじゃない。そんな時、聴き手がどこに注目するかと言えば、どれだけ強くそのアーティストもしくは曲に思い入れを持っているか、ということではあるまいか?思い入れが伝われば、仮に無名アーティストであっても素晴らしい作品だろうし、逆もまた然り。では、どこで「思い入れ」を感じればよいのか?ライナーノーツ?インタビュー?さてどうする?
 僕の場合は「どう曲を解釈しようとしているか」がポイント。例えば今回の場合、Bank Bandの「糸」は、櫻井和寿の独特の持ち味もあって、知らない人が聴けば彼の新曲だと思うかも。それほど彼に「馴染んで」いるのです。その点、小谷美紗子Trio+100sの「狼になりたい」には、曲中のブレスやビブラートなどにみゆきさんの影がしっかり見えていたりします。想像ですが、前者はみゆきさんの世界を自分の価値観で独自に解釈し、後者はスタイルを共有することで、みゆきさんの世界を深く理解しようとしているのではないか?と考えるわけです。いわば世界観の「創造」と「想像」の違いって感じでしょうか?
 両者に共通しているのは、原曲と濃厚な関わりが必要だということ。客観的に分析するにせよ同一化するにせよ、軽く片付けようとすれば、ファンには見抜かれてしまうものです。みゆきさんの曲と濃厚に関わる、これは尊敬の気持ちがなければできないでしょ。だって彼女の世界に浸るのって、好きでないと結構しんどいですもん、正直…。
 …ん?待てよ?となれば、このカヴァー集は、アルバムの形を借りた「中島みゆき研究論文集」なのではないか?まるで、みんなで各々の「中島みゆき論」を歌で発表している、そんな感じがしてきたぞ!ならば、ここで原曲集が重要になってくる訳です。「みゆき論」を進める上で必要不可欠でしょ?だってこれがないと比較検討できないもの。大切な重要テキスト。こう考えないと、原曲集を発売する意味が見出せない。ひょっとしたら、これはみゆきさんからの挑戦かもれませんよ。「さぁ、私をどう料理してくれるのかしらぁ〜ん?」なんてね。
 それにしても「せっかくなら、いっちょリマスターでもしちゃるかいっ!」…と言ったかどうかは定かではないですが、どうせなら良い音で聴いてもらいたいという姿勢が素敵ですよ、みゆきさん。皆さんには、是非この2枚を一緒にお買い求めになることをおすすめ致します。そして、ご一緒に「中島みゆき学会」に出席してみては如何でしょうか?

Text by 栗原 淳(羽村店)

『元気ですか』
中島みゆき-J.jpg




ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売中
CD
YCCW-10026
¥2,940(税込)

同日発売のカヴァー・ヴァージョンと対をなす、中島みゆきの原曲集。全曲リマスター、同じ選曲、曲順で構成され、カヴァー集を観照するための強力なテキスト。それと同時に、今作はカヴァー集に参加したアーティストたちへ、アーティスト・中島みゆきからの挑戦状とも言える。

V.A.『元気ですか』
V.A.元気ですか-J.jpg




ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売中
CD
YCCW-10027
¥2,940(税込)

中島みゆきの作品を11組のアーティストがカヴァーした作品集。アルバム・タイトルでもある「元気ですか」は、小泉今日子with GOTH-TRADによってカヴァー。この1曲だけでもインパクト大!みゆきワールドを掘り下げる者、再構築に挑む者、プロの意地が静かに火花を散らす良作。

【中島みゆき OFFICIAL SITE】http://www.miyuki.jp/

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