若林美智子

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若林美智子

「おわら風の盆」随一の胡弓の名手、
若林美智子の3年ぶりとなるニュー・アルバム『風の盆恋歌』が発売。
十八番「越中おわら節」を含む、全13曲収録!

(初出『Groovin'』2006年8月25日号)

若林美智子-A.jpg 「おわら風の盆」随一の胡弓の名手、若林美智子。富山県の中南部に位置する八尾町という町で、毎年9月1日から3日間に渡って催される「おわら風の盆」。八尾に暮らす人々が大切に守り育ててきたこの民謡行事は、今では全国から20数万人もの人が訪れるという。起源は1702年、「3日間、舞踊音曲は言うまでもなく、その他どんな賑やかなもの咎めないので面白く町内を練り廻れ」という言われのこの催し。中でも三味線、胡弓、太鼓の伴奏による富山民謡「越中おわら節」で踊る「おわら踊り」では、男性は半天を着て勇猛に踊り、女性は浴衣に衣笠を纏い艶っぽく上品に舞いを披露。その舞いの迫力も然る事ながら、若林美智子の音色を求めてこの催しに訪れる人も多いそうだ。
 実は民謡に胡弓が入るのは珍しいという。途切れなく震えるような音色が印象的なこの楽器は、哀愁を漂わせ鳴り響く。と同時に、このむせぶような響きこそが、楽曲に独特な深みを持たせているようにも思える。彼女の祖父も「越中おわら節」の胡弓の名手であり、伝承者の1人として活躍。"若林流"と言われる独特の奏法を孫娘である彼女が受け継ぎ、「越中おわら節」はもちろんの事、現在ではオリジナル曲にも精力的に取り組んでいる。
 そんな彼女の3年ぶりとなるニュー・アルバム『風の盆恋歌』。十八番「越中おわら節」をはじめ、石川さゆりの歌唱で有名な「風の盆恋歌」、胡弓が日本に伝わったルートと言われているシルクロードをイメージした喜多郎作曲による「シルクロードのテーマ」、緩やかなアルペジオを奏でるアコギとのアンサブルが叙情的な「コンドルは飛んでいく」、オルガンと郷愁感豊かにハーモニーを紡ぐ「峠の我が家」など、ジャンルレスに幅広く選曲。個性的な楽器に囚われず、楽器の持つ新たな可能性を見出した今作は、古き良き伝統を守りながら、次世代の伝承者である事の明確な意志を感じる仕上がりとなった。
 またオリジナル曲「花響(はなゆら)」を収録。インスト曲が続く中で、ふと現れる澄んだ歌声にもまた、瞬時に耳を奪われるというもの。胡弓奏者のみならず、彼女の歌い手としての情感豊かな表現にも注目して欲しい。

Text by 浜田幸子(編集部)

『風の盆恋歌』
若林美智子-J.jpg




ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICC-60533
¥3,000(税込)

「おわら風の盆」随一の胡弓の名手、若林美智子の3年ぶりのニュー・アルバム。十八番「越中おわら節」をはじめ、石川さゆりの歌唱で有名な「風の盆恋歌」から「アヴェ・マリア」まで、幅広いジャンルの楽曲で胡弓の美しい音色を聴かせてくれます。オリジナル曲「花響(はなゆら)」を含む全13曲。

【若林美智子 公式サイト】http://www.jvcmusic.co.jp/wakabayashi/

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