ダイアナ・クラール

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ダイアナ・クラール

美貌と美声を兼ね備えたJAZZ界の至宝、ダイアナ・クラール。
昨年のクリスマス・アルバムから約1年振りとなる、待望のニュー・アルバム!
シルキー・ヴォイスを充分に堪能できる傑作!!

(初出『Groovin'』2006年8月25日号)

ダイアナ・クラール-A.jpg いきなりミュートのトランペットで始まるこの新作。どんな感じかと全曲聴いてみると実に内容が濃い。というか、聴く側を全く飽きさせない素晴らしい仕上がりである。曲調も変化に富んでおり、しっとりとしたシンプルなバラードから、ザ・クレイトン・ハミルトン・ジャズ・オーケストラのビッグ・バンドやストリングスの美しいサウンドに乗ってスウィングする軽快なものまで、前作と比べるとストレート・アヘッドの世界に立ち返った作品といえる。
 カナダ生まれの彼女であるが、名門・バークレー音楽大学卒業後はニューヨークに活動の拠点を移し、1993年にカナダのマイナー・レーベルから1stアルバム『ステッピング・アウト』をリリースする。数年後にプロデューサーのトミー・リピューマ(当時は名門GRPの社長であり、現在は何とヴァーヴ・ミュージック・グループの社長)に才能を見出され、1995年にGRPよりメジャー・デビュー作『オンリー・トラスト・ユア・ハート』をリリース。その後ビッグ・ヒットを連発し、1999年リリースの『ホエン・アイ・ルック・イン・ユア・アイズ』では、何とアメリカ、ポルトガルでプラチナ、カナダではダブル・プラチナ、フランスではゴールドと、世界各国でスーパー・スターの名に相応しいベスト・セラーを記録。更にこのアルバムは、1999年度グラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされ、名実共に最高の称賛を得ることとなった(ちなみにこの年の最優秀アルバムはサンタナが獲得)。その後も2001年の『ザ・ルック・オブ・ラヴ』、2002年のライヴ・アルバム『ライヴ・イン・パリ』でも大ヒットを記録し、2001年のメジャー・リーグのオールスター戦でカナダ国歌を斉唱し大きな話題を呼んだ。ちなみに話題といえば、2003年12月にあのエルヴィス・コステロとめでたく結婚したダイアナ・クラール。今後リリース予定のアルバムでは収録曲の半数が共作によるオリジナルという、これまためでたい感じの話題盤となっているそうだ。
 と、あらすじはここまでにして、最近特にジャズ・ヴォーカルが何となく盛り上がっていると感じているのは私だけではないはず。ノラ・ジョーンズをはじめ女性シンガーばかりでなく、ジェイミー・カラムやピーター・シンコッティなど、ピアノの弾き語りスタイルで注目の新人が続々登場している。また、同じカナダ出身のマイケル・ブーブレなどにも彼女が与えた影響の大きさは想像に難くない。歌に注目が集まりがちではあるが、ピアニストとしても高い評価を受けているダイアナ・クラール。これまたカナダ出身のセリーヌ・ディオンのアルバムにもピアニストとして参加していることも頷ける。
 最後にプロデューサーのトミー・リピューマについて。まずピンときたのがボブ・ジェームスとデヴィッド・サンボーンの『ダブル・ビジョン』。マーカス・ミラーの渋いミュートで始まる「マプート」が1曲目に収録されており、これを高校時代に一生懸命コピーしたのでよーく覚えている。このアルバムのプロデュースも確かトミー・リピューマだったかと…。もう20年も前の作品だそう。但し、もっともっと有名な作品はいっぱいあって、代表作は1976年のジョージ・ベンソン『ブリージン』。他にもサンボーン、ナタリー・コール、マイケル・フランクス、それに60年代にはいわゆるバーバンク系を代表する1人としてA&Mなどで活躍し、ロジャー・ニコルズを手掛けるなど、これまでジャズ&ポップス界のスターの大ヒット・アルバムや名作を作ってきた偉い方(今は社長だしね)という訳である。とにかく良いですよ、これ。

Text by 堀尾康弘(東川口店)

『フロム・ディス・モーメント・オン』
ダイアナ・クラール-J.jpg




ユニバーサル クラシックス&ジャズ
8月30日発売
CD
[初回限定盤]DVD付 UCCV-9277 ¥2,800(税込)
[通常盤]UCCV-1095 ¥2,548(税込)

しっとりとしたオーソドックスなバラードから、ビッグ・バンド、ストリングスをフィーチャーした軽快なナンバーまで充実の内容。日本盤はボーナス・トラック1曲収録。初回限定盤は「レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス」「ルック・オブ・ラヴ」「ナロウ・デイライト」のPVを収録したボーナスDVD付き。

【ダイアナ・クラール 日本オフィシャルサイト】http://www.universal-music.co.jp/jazz/artist/diana/

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