SeanNorth

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SeanNorth

デビュー・シングル「final your song」が話題の3人組、SeanNorth(シャーンノース)。
曲ごとに様々な世界観を演出する、聴き応え十分の
デビュー・アルバム『Story Neverend』をリリース!

(初出『Groovin'』2006年9月25日号)

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 なんとも言えない、清々しい聴後感を残す作品だ。それは真っ直ぐに響くナチュラルなヴォーカルによるものか。生楽器のみずみずしい音色がもたらす、空気をたっぷり含んだサウンドの成せる業か。小細工の一切ない、滑らかな旋律のせいか。はたまた歌のあちらこちらで光を放っている希望によるものか。その歌声は曲に込められた真摯なメッセージを風のようにさりげなく伝え、その音は心地よいメロディを伴って、心の奥深いところまでを潤すかのごとく染み渡る。曲ごとにさまざまな世界を巡り、そして日常へといざなう音楽のつづれ織り13編。そこは広大な草原。ここはどこまでも青が続く空の下。気が付くといつもの散歩道。そしてある時は薄日差す花曇りの朝、ある時は木漏れ陽揺れる昼下がり。一転して、少し蒸し暑い夏の夜。あらゆる景色や温度、そして感情を喚起させ、その場面へと導いてくれる。なんとも不思議な感覚。だがそれはとても心地よいものである。間口が広いのは言わずもがな、だ。
 作詞・作曲、アレンジを一手に引き受ける佐々木久夫(G、Cho)を中心に、Lumi(Vo、Cho)、ムーチョ(G、Cho)からなる3人組、SeanNorth(シャーンノース)のデビュー・アルバム。ユニット名はアイルランドの伝統的歌唱法「sean-nos(シャーンノス)』から由来しているそうで、なるほど、アイリッシュ・ミュージックの素養はアンサンブルのあちこちに息づいている。民俗楽器を用い、アコースティックの有機をふんだんに盛り込んだ丁寧なサウンド・プロダクションは、ややもすると壮大すぎたり、高尚なものになりすぎるか、もしくは単なる心地よいBGMになりがちなのだが、自然な華やかさをまとった純然たるポップス作品に仕上げているところが、このユニットならでは。さらにはクラシカルな雰囲気を随所に漂わせつつも、時折テクニカルなエレキ・ギターが切り込んで意表を突いてきたり、凝った展開をさりげなく盛り込んだりと、曲を平坦にしない工夫がなされていて、普遍的でありながら同時代Jポップの空気を感じさせる仕上がりになっていることも興味深い。
 収録曲のうちシングル曲は「final your song」のみ。昨今当たり前になった、シングルを乱発して詰め込んだ荒手のオリジナル・アルバムではなく、良質な作品を残そうという"アルバム・アーティスト"の気概を窺わせる。先行でリリースされたデビュー・シングルには、なんとアルバム収録曲すべてをダイジェストとして収め、アルバムへの布石としているところがなんともユニークだ。そして何より「良いメロディー、良い歌詞、良いサウンド」を標榜する彼ら。メロディ・メイキングのみならず、音楽的な引き出しの多さが窺えるアレンジ面でも新人らしからぬ才能を存分に発揮したデビュー作である。短絡的で、その場しのぎの作品が氾濫する、風化の早い現在のJポップ・シーンにさりげなく一石を投じる作品となっている点も付け加えておきたい。

Text by 篠原美江

『Story Neverend』
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ミューチャー・コミュニケーションズ
10月11日発売
CD
PYCE-2006
¥2,700(税込)

テレビ東京系ドラマ24『怨み屋本舗』エンディング・テーマ「final your song」も絶好調の3人組ユニット、SeanNorth(シャーンノース)のデビュー・アルバム。ジャズ、ケルト音楽等のテイストを織り込んだ楽曲の完成度の高さにも要注目!

【SeanNorth Official Website】http://seannorth.jp/

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