スキマスイッチ

卓越したポップ・センスから紡ぎ出される普遍的なグッド・メロディ。
優しさに満ちた世界観で幅広いリスナーを魅了するスキマスイッチ。
話題のシングル「ガラナ」に続く、ニュー・シングル＆ニュー・アルバムを発表！

（初出『Groovin'』2006年11月25日号）

　スキマスイッチが奏でる音楽の魅力…それはエヴァー・グリーンであること、これに尽きると思う。どんなに時が移ろうとも、変わらぬ輝きを放ち続ける魔力が彼らのポップスにはある。自らのルーツ・ミュージックをリスペクトし、そのエッセンスを巧みに取り入れながら今の時代に息づかせる手腕は天下一品だ。以前、何かのインタヴューで彼らが語っていた言葉が忘れられない。"スキマスイッチ"という一風変わったユニット名について聞かれた彼らは、「音の響きが程よくダサいのがいい。ダサイものは時代が変わっても残っていく。カッコイイものは次々と新しいものに変わっていくから」…そんな風に答えていた。この言葉には思わず膝をポン！と叩いてしまうほど納得させられてしまった（まさに目からウロコ！）。確かに流行と共に成り立つカッコイイものは風化するスピードが早い。いわば瞬発力の音楽。一方、流行に追随しないものはセンセーショナルではない分、世代を問わずに愛されるし持久力もある。…そりゃ若い時分は流行の音楽を追っかけたりもしたが、音楽的基盤や音楽に対する深い造詣がないと作り得ない"普遍的なグッド・メロディ"は、最先端のサウンドを作るよりも何十倍も難しいことなんじゃないかとそれなりの年齢を重ねた今、つくづく思う。そしてスキマスイッチは、そんな良質な21世紀型トラディショナル・ポップスを紡ぎ続けているのだ。
　2003年のメジャー・デビュー以来、"曲そのものの良さ"でじわりじわりとファン層を拡大し、気が付くとJ-POPシーンに欠かせない存在となっていたスキマスイッチ。そんな彼らのニュー・シングル『アカツキの詩』がリリースされた。国民的アニメの劇場版『ドラえもん のび太の恐竜2006』の主題歌「ボクノート」、人気コミックの実写版映画『ラフ』の主題歌「ガラナ」という話題作に続く今作は、これぞスキマ節！ともいえるミディアム・チューン。すれ違う気持ちを綴った切ない歌詞が心に沁みる名バラードだ。また、シングルのカップリングとして恒例となったインストゥルメンタル・シリーズでは、スキマスイッチの2人による初のピアノ連弾曲を収録。こちらも聴き逃せないところだ。
　更に11月29日には、オリコン初登場1位をマークした『空創クリップ』から1年4ヶ月ぶりとなる、待望の3rdアルバム『夕風ブレンド』をリリースする。ヒット・シングルはもちろん、オフィス・オーガスタ所属のアーティスト達による強力ユニット、福耳の一員として発表した「惑星タイマー」のオーケストラ編成によるセルフ・カヴァーや、ライヴではすでにお馴染みのナンバーなど話題曲が満載だ。なんとなくセンチメンタルになるこの季節…優しさに満ちたスキマ・サウンドを心ゆくまで堪能しよう。

Text by 池 佐和子