五嶋 龍

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五嶋 龍

これ程までに無垢で迷いの無い、
真っ直ぐなヴァイオリンを今まで聴いた事がない!
恐るべき18歳、五嶋 龍!!

(初出『Groovin'』2006年12月25日号)

五嶋 龍-A.jpg "Talking about music is like dancing about architecture.(音楽について語る事は、建築について踊る事と同じだ)"。使い古されたある映画の台詞の引用だが、五嶋 龍の今回のアルバムを聴いて再認識せざるを得なかった。音楽ついて語る事は無意味でナンセンスだ。兎に角このアルバムを聴いて欲しい。
 デビュー・アルバム『Ryu Goto』が大ヒットし、飛躍し続ける五嶋 龍の2007年の新譜となる今作は、2006年6月〜7月にかけて全国13ヶ所、全てソールド・アウトで大旋風を巻き起こしたコンサート・ツアーのハイライト、東京サントリーホールでのリサイタルを完全収録したライヴCDである。
 1曲目であるベルギーの作曲家、イザイによる「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番《バラード》」は1924年に作曲され、バッハ回帰的新古典主義音楽に属するが、五嶋 龍の手に掛かると最先端の現代音楽の様な、研ぎ澄まされた幾何学的文様を立体的に浮び上らせる。2〜4曲は、R・シュトラウス「ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調」。シンフォニストとして知られるR・シュトラウス23歳の作品で、青年作曲家の偽らざる心情と無垢なる情熱が吐露した作品が18歳の五嶋 龍とシンクロし、苦悩と大胆さが率直に表現されている。5〜7曲は、ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調」。20年以上の歳月を掛け交響曲第1番等の大作を完成させ、50代の時に静養先にて作曲された、穏やかで心の旅路を思わせるこの曲を高い内的燃焼度で奏でている。8曲目の武満 徹「悲歌」では、18歳の若々しい演奏家とは対称的に、何処までも静謐な武満ワールドを展開する。9曲目のラヴェル「ツィガーヌ」、そしてアンコール曲のサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」は、共に十八番とも言うべき作品。エレキ・ギターでロックを楽しむ五嶋 龍ならではの新しい感覚に溢れた名演となっている。
 これらの楽曲群を弱冠20歳にも満たない青年が、悠々としかもライヴで弾き熟した事に唯々驚嘆する。完璧なテクニックはさることながら、一音一音全てが新鮮で迷い無く、真っ直ぐだ。このイノセントな響き…言葉は無用…聴くのみである。

Text by 大澤智芳(すみや本社 営業グループ)

『ヴァイオリン・リサイタル、2006』
五嶋 龍-J.jpg



ユニバーサル クラシックス&ジャズ
2007年1月1日発売
CD
UCCG-1335
¥2,800(税込)

デビュー・アルバム『Ryu Goto』が大ヒットし、飛躍し続ける五嶋 龍の2007年の新譜は、2006年6月〜7月に全国で行われたコンサートのハイライト、東京サントリーホールでのライヴCD。ロマン派から現代作品まで、瑞々しい感性で聴衆を惹き付ける演奏は無限のポテンシャルを感じさせる。

【五嶋 龍 オフィシャルウェブサイト】http://www.ryugoto.com/

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