マーカス・ミラー

ARTIST PICK UP

マーカス・ミラー

ベーシストの枠には収まりきらない
コンテンポラリー・ジャズ/ブラック・ミュージック界のカリスマ、
マーカス・ミラーが2年振りに新作をリリース。

(初出『Groovin'』2007年7月25日号)

マーカス・ミラー-A.jpg 梅雨に入る直前、ひとり車で遠出をする機会があり、朝方4時間ばかり東名高速を走らせた車の中で、久しぶりにベスト盤『ザ・ベスト・オブ・マーカス・ミラー』を大音量で聴いたのだが、実に良いアルバムだと再認識させられた事があった。何が良いかというと『サドゥンリー』(83年)、『パーフェクト・ガイ』(84年)といった初期の2作は歌ものが中心で、"ベーシスト、マーカス・ミラー"のファンにとっては「?」という印象が僅かながらあった(その後の"プロデューサー、マーカス"としての片鱗を垣間見る事はできるが…)。その後、満を持してリリースされた『キング・イズ・ゴーン』(何と前述『パーフェクト・ガイ』から9年振りのソロ・アルバム)は正しく"ベーシスト、マーカス・ミラー"から「これなら納得するだろう?」というメッセージが伝わってきそうな素晴らしい内容で、当時かなり話題にもなり(因みに"キング"とは、91年にこの世を去った帝王マイルス・デイヴィスの事であり、名盤『TUTU』はマーカスのプロデュース作品)、このベスト盤にはその後のソロ作品やレニー・ホワイトらと結成したジャマイカ・ボーイズからもバランス良く選曲されていて、彼の才能を余す事なく味わう事ができるからである。
 そして最新作がこの『フリー』。全11曲収録されているうちの注目は何と言ってもコリーヌ・ベイリー・レイが歌う「フリー」(76年デニース・ウィリアムスのヒット曲)とラストに収録のタワー・オブ・パワーのヒット曲「ホワット・イズ・ヒップ」だ。「フリー」は、とてもポップなメロディとリラックスしたベース・プレイがマッチした心安らぐ1曲。一方「ホワット・イズ・ヒップ」ではロッコ(タワー・オブ・パワーのベーシスト)の代名詞である16分独特のグルーヴ感以上のものを全編スラップで演奏している。これを聴いて思い出したのが、ウェザー・リポートの「ティーン・タウン」。マーカスの3rdソロ・アルバムの中に物凄いプレイが収録されている(これも全編スラップ)。全体を通して前述のベスト同様バランスが良く、随所に「ピリッ」と効いたベース・プレイが織り込まれていて実に素晴らしい1枚だ。また初回限定盤はライヴ・パフォーマンスやレコーディング・プロセスのメイキング映像を収録したDVD付き。DVDでのLIVE作品はリリースされているが、レコーディングの様子を映像で楽しめるのはかなり貴重。プロデューサーとしての才能も同時に感じる事ができる。

Text by 堀尾康弘(横浜北山田店)

『フリー』
マーカス・ミラー-J.jpg




ビクターエンタテインメント
発売中
CD
[初回限定盤]DVD付 VIZJ-8 ¥3,200(税込)
[通常盤]VICJ-61448 ¥2,520(税込)

コリーヌ・ベイリー・レイ、盟友デイヴィッド・サンボーンなど参加ゲストも豪華。ベーシスト&プロデューサーの才能がバランス良く凝縮された作品。全編スラップで弾き倒すタワー・オブ・パワーのヒット曲「ホワット・イズ・ヒップ」は圧巻!初回限定盤にはライヴ、レコーディング風景など貴重な映像を収録したDVD付き。

※写真は[初回限定盤]のジャケットです。

【マーカス・ミラー 日本オフィシャルサイト】http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A017006.html

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