SUM41

デイヴ・バクシュが脱退し、3ピースとなって制作された新作。
バンド初期の爆裂テンションが復活した4thアルバム『アンダークラス・ヒーロー』リリース！
一大パンク・ロック・レコードに仕上がっています !!

（初出『Groovin'』2007年7月25日号）

　昨年5月、「SUM41からギタリストのデイヴ・バクシュ脱退」というニュースが飛び込んできた時は本当に驚いた。高校時代に別のバンドに所属していた4人が、夏休みの41日目に差しかかった日に一緒に見に行ったワープト・ツアーに感銘を受けバンド活動が始まった、という逸話が物語るように、この4人は運命共同体のようなもので、メンバーの1人が脱退などあり得ないと思っていたから…。デイヴが去った後、デリックは「不運なことが重なって、いろいろな変化からもう復活できないだろう」と思っていたらしく、バンドが存続するかさえ確かではなかったようだ。が、こうして4作目となる『アンダークラス・ヒーロー』を発表、3ピースとなったSUM41の新しい方向の第一歩を僕達に示してくれた。
　ネオ・パンクとエモとミクスチャーのごった煮サウンドが痛快だった、いわゆる「悪ガキ」路線の1st、2nd。一転してシリアスなソング・ライティング、メタリックな方向性を見せつけた3rd。それらに続く4作目の今作。一言で言えば"アーティスティックなパンク・ロック・レコード"だ。アルバム全体を通じて、音楽的にはメタリックな部分は幾分抑制され、バンド初期に見られたクランチ・ギターと爆裂疾走サウンドが復活。1stシングルでもあるタイトル・トラック「アンダークラス・ヒーロー」が顕著な例で、スピード感あるパンクのエナジーとラップ・ビートが痛快!! また「ベスト・オブ・ミー」のメロディアスなアコースティック・ギターが若い気持ちを表現していたり、他にも冷淡なピアノ旋律など、ヴァラエティに富んだ音を聴かせる面もある。詞的にも成熟し、社会に対する混乱やフラストレーションを反映させた曲が大部分を占め、デリックの内なるパーソナルな部分も露呈されたメッセージ色の強い作品でもある。「ディア・ファーザー」ではデリックの実在しない父親を、「ソー・ロング・グッバイ」ではバンドを辞めたデイヴを、そして「スピーク・オブ・ザ・デヴィル」「カウント・ユア・ラスト・ブレッシング」では彼の内なる悪魔をテーマとして扱っている。また「マーチ・オブ・ザ・ドッグス」「ザ・ジェスター」といった曲ではブッシュ大統領やアメリカ政府を批判しており、『チャック』の「ウィア・オール・トゥ・ブレイム」のような政治色のある楽曲が今作にも収録されている点も忘れてはならない。
　デリックは音楽を通じて、自分が今何を言いたいのかをはっきりさせなければならなかったのだろう。「1枚目のアルバム以来、メンバーが皆こんなに一緒にいたことはなかったな…。」とデリックは言う。「皆がやる気になったからやったようなものだよ。だってそれ以外意味がないだろう、世の中ネガティヴなエナジーで一杯だからね。このアルバムは最初から最後まで意味があるものにしたかった。コンセプト・アルバムでもなく、単なるフィクションでもなく、アルバム全体が普遍的なものになるように」
　デイヴ不在の中、完成させた『アンダークラス・ヒーロー』。過去への鏡は壊され、SUM41の新たなチャプターがここから始まる…。

Text by 大林 誠（静岡本店）