50セント

ヒップ・ホップ史上"最多喧嘩売りラッパー"…50セント。
自身のファースト・ネーム"カーティス"を
堂々と冠したサード・アルバム、遂にドロップ!!

（初出『Groovin'』2007年8月25日号）

　自身のクロージング・カンパニーやスニーカー・ブランドを設立し、成功を果たした企業家、ハリウッドでの俳優活動や社会的なチャリティ活動までそつなくこなすクロスオーヴァーしたスーパー・スターな側面と、出自であるストリートでの"ビッグ・マウス"、はたまた"プロモーション"とも言われるほど、他のラッパーへの好戦的なビーフ攻撃（いまや師弟関係から犬猿の仲になってしまったザ・ゲーム、最近ではジェイ・JやNASにまで）を繰り返すストリート・ファイター・ラッパーな側面と、2つの世界を巧みに使い分ける50セント。
　そんな50セントの大注目のサード・アルバムは、デビュー・アルバム『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』をリリースするまでの自分自身を吐露した"告白のアルバム"。これまで様々なビーフを展開してきた喧嘩売り50セントの答えが詰まった作品でもあり、実にセンセーショナルな内容。そして「より弱い自分をみせる」とも発言しており、最近聴いているというスモーキー・ロビンソンを始めとしたモータウン・アーティストからの影響をも反映させた、今までとは一味違うメロウな面も見せてくれている。
　実は今作、当初3月にリリースが予定され『カーティス：SSK』（SSKはサウンド・スキャン・キラーの意）とタイトルされていて、来年2月のリリースが早くも宣言された『BEFORE I SELF DESTRUCT〜自我崩壊の日』とタイトルされるアルバムの予告編であるという。ゲスト陣もエミネムやドクター・ドレーを始め、G-ユニット、ファレル・ウィリアムス、カニエ・ウェスト、エイコン、ウィル・アイ・アム、ティンバランド、ジャスティン・ティンバーレイク等、ここには書き切れないほど豪華絢爛なアーティストが集結。ヒップ・ホップ・シーンのみならず、エンターテインメント界を揺るがす事、間違いなしの今作。次回作のアルバム・タイトルである"自我崩壊"の意味するところは…。この"告白アルバム"のその先には果たしてどんな"自我崩壊"が待っているのか…。いずれにせよ、実に興味深い作品だ。

Text by 大林 誠（静岡本店）