ケイティー・タンストール

ARTIST PICK UP

ケイティー・タンストール

映画『プラダを着た悪魔』のオープニング曲「サドゥンリー・アイ・シー」で
お馴染みの彼女の新作は、強烈なビートのポップ・ソングと
私的でミステリアスなバラードが集まった聴き応え十分な力作!!

(初出『Groovin'』2007年8月25日号)

ケイティー・タンストール-A.jpg ケイティー・タンストール…スコットランド生まれの現在31歳。基本姿勢はアコースティック・ギターを中心としたシンプルなサウンドを奏でるシンガー・ソングライター(リッキー・リー・ジョーンズやジョニ・ミッチェル、キャロル・キング辺りの流れを汲んだアーティストの1人)で、米『ローリング・ストーン』誌から「フォーク・ロックの女神」と讃えられている。しかしその一方では、グランジ世代らしい太いギター・サウンドをかき鳴らし、力強く歌う一面をも持ち併せている。また、ライヴ・パフォーマンスでは、クラップ・ハンズやコード・バッキング、自分の声などをその場でサンプリングしループさせ、そのバック・トラックに合わせて弾き語るという技も披露している(時にはペダルを踏んで、自分のギターを叩く音をループさせながら歌ったりもする)。まさに、無限の可能性を秘めた21世紀を代表する女性アーティストだ。
 2005年に発表された彼女のデビュー・アルバム『アイ・トゥ・ザ・テレスコープ』での、彼女の楽曲作りの引き出しの多さに驚かされた方も大勢いるだろう。心に響くポップな楽曲、ルーツに根付いたエレクトロなブルース、そしてオルタナティヴなロック…。多種多様なジャンルの音楽が、絶妙なバランスで纏まった刺激的な1枚だった。さらにシングル3曲、グラミー賞ノミネートの「ブラック・ホース・アンド・ザ・チェリー・ツリー」、彼女の代表曲になった「サドゥンリー・アイ・シー」、そして「アザー・サイド・オブ・ザ・ワールド」が様々なメディアで流れるようになったおかげで、同アルバムは世界中で大ヒット、マンモス・セールスを記録した。
 これほどの成功を手にした彼女の新作、やはり皆さんは気になるところだろう。このアルバムのリード・シングル「ホールド・オン」は強烈なビートの効いたノリのいい曲。彼女が住んでいたノース・ウエスト・ロンドンで車のウィンドウから流れてきた爆音のダンスホール・リズムがヒントになったらしい。他にも、ロック調全快な「セイビング・マイ・フェイス」(50歳の女性がティーンのように振舞おうとしている歌)、繊細でジャジーな「サムデイ・スーン」、静かで私的な「ビューティー・オブ・アンサーテンリー」、彼女のポップな一面が窺える「アイ・ドント・ワント・ユー・ノウ」などデビュー作以上に幅広く、秀逸な楽曲が揃っている。アルバム・タイトル『ドラスティック・ファンタスティック』は、アメコミを原作とした映画『シン・シティ』を観て衝撃を受けた彼女が、音楽業界という異様な世界で生計を立てることが、まるでコミックのようであり、その登場人物として自身の存在を表現するのにぴったりの言葉だと感じて付けたとのこと。パワフルなリリックと、大胆でカラフルなメロディーが一杯詰まったこのアルバムを聴けば、彼女がソングライターとしても、ミュージシャンとしてもいかに成長したかがよく分かるだろう。「成功が重荷になってはだめ。成功にとらわれすぎて次の一歩が踏み出せなくなることはよくあることだけど、みんなに気に入ってもらったものを盲従的に繰り返すなんてだめよ」とは彼女の弁。この言葉通り、新作『ドラスティック・ファンタスティック』は、勇敢に彼女の音楽的才能を打ち出した珠玉の1枚だ。

Text by 大林 誠(静岡本店)

『ドラスティック・ファンタスティック』
ケイティー・タンストール-J.jpg



EMIミュージック・ジャパン
9月5日発売
CD
TOCT-66702
¥1,980(税込)
※スペシャル・プライス

スコットランドから世界に羽ばたいたドリーム・ガール、ケイティー・タンストール。気になるセカンド・アルバムは、彼女の31年に及ぶソングライター、そしてミュージシャンとしての人生が凝縮された秀逸な楽曲がズラリと並んだ自信作。日本盤のみボーナス・トラック収録、紙サック仕様。

【ケイティー・タンストール 日本オフィシャルサイト】http://www.emimusic.jp/intl/kt/

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