桑田佳祐

ARTIST PICK UP

桑田佳祐

怒涛のシングル3連続リリースの3作目が登場。
今作もCMで既にお馴染みの1曲、70年代ソウル歌謡直結の必殺チューン!
目の前に広がるのは横浜の夜景…2007年を締め括るに相応しい充実のナンバーです。

(初出『Groovin'』2007年11月25日号)

桑田佳祐-A.jpg

 桑田佳祐の2007年第3弾シングル『ダーリン』がリリースされる。すでに今年は『明日晴れるかな』『風の詩を聴かせて』と2作のシングルをリリースしており、かなりペースがいい。全く発表されない年もある事実を考えれば3作はかなりハイ・ペースだし、その衰えぬ制作意欲や長く続けることの凄みを感じずにはいられない(ちなみに僕の母親と桑田は同い年である)。『明日晴れるかな』と『風の詩を聴かせて』のスパンは3ヶ月、今作は約4ヶ月後となる12月5日にリリースされる。
 この原稿を書くにあたり手元に届いたサンプルCDをさっそくセットしてみると…それはもう最高な気分であった。僕としてはサザン名義の『人気者で行こう』に収録されている「夕方 HOLD ON ME」を想起させるような曲調で、これは期待できると一先ず小躍りをしてみた。歌謡曲が桑田が作る楽曲の下地にあるというのは説明不要の事実だと思うし、過去の作品群を聴けば納得できる事。だけれど今作には場末な感覚はなく「東京」のような情念も感じさせない。情念系は桑田の歌謡曲路線において、というか彼の制作活動において重要な一端をなすのだろうが、それよりも洗練された70年代的和モノ・ソウルを今回は提供してくれている。ホーン、コーラス、ベース・ライン等が実に秀逸に構成されており、リヴァイヴァルという枠組みよりも70年代に直結しているというイメージ。特にストリングス狂の僕としてはこういう甘美なストリングスが導入されると、踊り狂って、メロウになって、すぐさまフィラデルフィアにすっ飛んでいけるんだけど、どうにもこの曲ではフィラデルフィアへは飛べない。どこに飛ばされるかというと…今回の舞台は「横浜」。今、僕が住んでいる相模原から横浜までの小旅行…である。「ィヨコハマ」がトレンディという点も桑田らしいし、70年っぽさを醸し出しているのではないだろうか。僕のように関東の端で生まれ育ったほとんど山猿のような人間には、首都圏で東京に次ぐ第二の都市であり古くから港町として栄えた国際的なこの街に、和洋折衷な奇形的な怪しさを感じる。そこで繰り広げられる男女の秘め事は、時に淫らで時に純粋なもの。今作「ダーリン」はでそう謡っているよう。ベイブリッジあたりか中華街の雑踏の中で涙をこらえて「あばよ」とか「彼氏が待ってる、いきなよ」なんて強がっちゃたりするんだよ、きっと。本当は辛いし、酷い男に思われるかも知れない。でも冷たくさよなら…因幡晃じゃないけど「わかってください」って感じだろうか?こんなドラマのような別れに若干気恥ずかしくもなるが、この曲は、そんな「横浜」という都市空間をドラマチックに仕立て上げているのだろう「(こっちまで泣けてくる…)。
 主観的ではあるが、今年のシングル3作の中で一番のクオリティーの高さを感じたのが今作『ダーリン』である。すでにCMでもオンエアされているので話題性十分の楽曲だが、正直タイアップが無くてもガンガン売れる曲じゃないかと思う。というか、70年代和モノ・ソウルの神話と普遍性を信じている僕としては、こうした作品を21世紀になっても安心して聴ける事が嬉しい。これは買いですよ。

Text by 黒岩周作(成瀬店)

『ダーリン』
桑田佳祐-J.jpg


タイシタレーベル/スピードスターレコーズ/ビクターエンタテインメント
12月5日発売
Maxi Single
[初回限定生産盤]VIZL-371 ¥1,380(税込)
[通常盤]VICL-37100 ¥1,260(税込)
[アナログ盤]VIJL-60900 ¥1,995(税込)

稀代のポップス・メイカー、桑田佳祐。3連続シングル・リリースの3作目となる今作は、桑田の十八番、情念系歌謡ではなく洗練された70年代和モノ・ソウルに直結する期待の1曲。横浜をこうもトレンディに謡える男はそういません!初回限定生産盤 は"Darling"トゥインクルバッジ付き。

※アナログ盤は数に限りがあります。在庫状況等、店頭にてご確認下さい。

【サザンオールスターズ OFFICIAL WEBSITE「sas-fan.net」】http://www.jvcmusic.co.jp/sas/

inserted by FC2 system