9mm Parabellum Bullet

新時代のスタンダードの完成にして、オンリーワンな存在感！
今、最もリアルで信じられる4つの弾丸、その突破力の究極形、
ファーストにして歴史に名を刻む名盤『Termination』、遂に降臨。

（初出『Groovin'』2007年11月25日号）

　いきなりフル・スロットルで突き抜ける突破力絶大な1曲目「Psychopolis」で始まり、物凄い速さで爆走する最終曲「Punishment」まで全12曲、トータル39分32秒。アルバム『Termination』は時間では計れない濃度と密度を誇り、新人の1stとしては超がいくつ付くか分からないくらい破格の出来となった。
　あらゆるジャンルを呑み込んだ独特の音楽性と、その爆発的なライヴ・パフォーマンスが話題を呼んでいる9mm Parabellum Bullet。5月にリリースしたPrepared Disc『The World e.p.』（期間限定盤）は、美しく、獰猛に移り変わる曲調がとても新人とは思えないクオリティで、プレ・デビュー盤にして異例のチャート・アクションを記録した。さらに10月にDebut Disc『Discommunication e.p.』をリリース。歌謡ポップスを思わせるメロディに、このイントロ・リフを思いついただけで天才！タイトル曲に加えて35分を超えるライヴ音源を収録した前代未聞のデビュー盤として話題となった。そんな好状況の中リリースされる1stフル・アルバムは、9mmが2007年最もブレイクした新人として歴史に名を刻む事を宿命付けられた1枚である。そこまで言い切ってしまっても良いくらいの名盤だ。
　『The World e.p.』にも収録された爆走する名曲「Heat-Island」のアルバム・ヴァージョンや、複雑で革新的かつグッド・メロディが破格の「Sleepwalk」ではプログレッシヴな彼らの特徴が色濃くみえる他、歌謡曲性をはっきりと感じられる「砂の惑星」、ヘヴィ・ロックなリフと物憂げなメロディが過激な「Sundome」、独創的なギター・リフが印象的なミドル・チューン「Butterfly Effect」など、あらゆるジャンルを9mm流に昇華する唯一無二のスタイルが結実された曲並びとなっている。「Heart-Shaped Gear」は「チキンゾンビーズ」辺りのミッシェルを彷彿とさせる1曲だが、タイトルからはニルヴァーナへのオマージュを感じるし、ロック・チューンとして秀逸な「Battle March」はギター・ソロがリフっていうのもイイ。
　分かってもらえるだろうか。この長い名前のバンドが放つ、アルバムという名の弾丸はとんでもない代物である事を。彼らの特徴はアルバム・タイトル曲「Termination」 に顕著に見られる、歌謡曲・GSを彷彿とさせるメロディ・ラインと1小節ごとに色を変えるバンド・アンサンブル、特にハードでトリッキーな変幻自在のギター・リフとのミスマッチ感が新たな発明として耳に残る事である。彼らがどこまでそこに意識的なのかは分からないが、こんなにリアルなロック・バンドが登場してきた事を素直に喜びたい。彼らのライヴがエクストリームである事は有名だが、このアルバムを経てさらにストレンジに変化している事だろう。前号に「この波に乗らない手はない。」と書いたが、このアルバムの前では全てが飲み込まれていく。全面降伏するしかないのだ。新時代のスタンダードの誕生であるのだから。

Text by 中野智人（すみや本社 営業グループ）