角松敏生

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角松敏生

角松敏生がゆかりのミュージシャンと共に作り上げた、
バラード・アルバムという、企画盤の体裁を軽々と超える現在進行形の最新作。
改めて世に問う、「いい曲とは、いい歌とは、いい演奏とは」。

(初出『Groovin'』2007年12月25日号)

角松敏生-A.jpg 角松敏生がバラード・アルバムを出した。過去のバラード集は1985年の『T's Ballad』、1991年の『Tears Ballad』の2作。どちらも冬にリリースされた。恐らく、冬=クリスマス=甘いバラードという周囲の考えも、なきにしもあらず。とはいえ、それぞれに新しく手を加え、それぞれが直近のオリジナル・アルバムを受けての内容だったことは間違いなく、企画盤の様相ながらオリジナルとなんの遜色もないものに仕上げていることは作品を聴けば明らかだ。本作『Ballad Collection』は『Tears Ballad』から実に16年を経ての3作目となる。現役のミュージシャンなら当然のこととはいえ、元々、角松はカヴァー、コンピレーション、といった企画モノを好まない人だ。それにしてもタイトルがあまりに素っ気ない。彼にしては、と首を傾げるも、ヒントはその前にあった。"Players Presents"。
 最新のオリジナル作『Prayer』を引っ提げたツアー「Player's Prayer」を昨年末に終えた彼は、その半年後、再び「"Player's Prayer" RETURNS」なる音楽行脚に出る。現在は今夏から来春にかけて続くそのツアーの真っ最中だ。会場の規模はもとより参加ミュージシャン、メニュー、アレンジも全て変えるという試みで音楽の表現方法を追求するという。運動不足のヴェテラン・ミュージシャンを蝕みがちな"音楽的メタボ"とは、つくづく無縁の人たちだ。その無謀ともいえる実験的なツアーを共にするメンバーが、本作では角松をプロデュースする側に立ち、本人は歌に徹するという。選曲もそれぞれのプロデューサーに一任。そこに角松自身の思いを入れないというコンセプトが、それ以上どう解釈しようもないタイトルにも表れているのだと思う。
 その内容は、近年のアルバムからの曲を中心に、5年に渡る活動休止前の80年代後半から90年代初頭にかけての楽曲、提供曲でありながらすでにオリジナル然とした「You're My Only Shinin' Star」や「もどり道」までと幅広い。原曲の良さ、角松のヴォーカリゼーション、コーラス・ワークを生かすのはもちろんのこと、前作『Prayer』や前々作『Fankacoustics』から続く生音にこだわったプロダクションを踏まえつつ、いっそう風通しよく、かつ洒脱なトラックが揃った。シンプルであることと薄く安くすることをイコールにしない、もはや死語になりつつある"敏腕ミュージシャン"たちの技術とセンスのみならず、表現者・角松敏生に対する彼らの深い敬愛の情と、高いミュージシャンシップを細部にまで感じ取ることができる。
 他の収録曲と見事なまでに融合している唯一の角松セルフ・プロデュース曲「We're Together」を聴きながら、彼の次作に思いを馳せる。今回の逆転のコラボレーションが今後の作品にどう繋がっていくのか、そのときこのバラード・アルバムがどれほど有意義な存在になっているのか、見極めたいと思う。

Text by 篠原美江

『Players Presents TOSHIKI KADOMATSU Ballad Collection』
角松敏生-J.jpg




BMG JAPAN
発売中
CD
BVCR-11112
¥3,059(税込)

★『Players Presents TOSHIKI KADOMATSU Ballad Collection』
収録曲&プロデューサー
01.You're My Only Shinin'Star(小林信吾) 02.海〜THE SEA〜(森 俊之) 03.LIVE (江口信夫) 04.もどり道(友成好宏) 05.5000マイルのカウンター(今 剛) 06.SINGLE GIRL(田中倫明&大儀見 元) 07.RAIN MAN(森 俊之) 08.月のように星のように(チアキ&凡子、上地一成) 09.WHAT IS WOMAN(MAOCHICA) 10.これからもずっと(松原秀樹) 11.崩壊の前日(山内 薫) 12.NEW YEAR'S EVE(梶原 順) 13.We're Together(角松敏生)

『T's Ballad』『Tears Ballad』に続く16年ぶりのバラード集は、レコーディングで、ライヴで角松敏生を支え続ける日本屈指のミュージシャンがプロデュースを手掛けた意欲作。全曲新録音、最新曲も収録の"ニュー・アルバム"だ。

【角松敏生 Official Site】http://www.toshiki-kadomatsu.jp

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