九州男

ジャパニーズ・レゲエ界に巻き起こる新たな風、九州男（クスオ）。
インディーズ時代に数多くの記録を打ち立て、遂にメジャー・リリース！
1stシングル「1/6000000000 feat.C&K」は、出会いの大切さを気付かせるラヴ・バラード。

（初出『Groovin'』2008年1月25日号）

　その名の通り、九州は長崎県出身のシンガー・ソングライター九州男。ジャパニーズ・レゲエ界に加わる新たな才能として、今じわじわと頭角を現してきている。スロウ・ダウンしたゆったりと揺り返されるリズム、温かなメロディと素朴で人間味溢れる歌詞。そんな生命力に満ちた楽曲が多くの人の共感を呼び、メディアへの露出の少ないインディーズ時代からすでに、じわじわと人気を獲得してきた。昨年6月にリリースされたデビュー・ミニ・アルバム『こいが俺ですばい』収録の「出会い。。」は、湘南乃風のRED RICEやBIG RONをフィーチャリング・アーティストに迎えた切ないラヴ・ソングで、iTunes配信のレゲエ・チャートで史上初の43日連続1位を記録。その波はレゲエ・ファンのみに留まらず、ポップス・ファンにも強く希求するチャート・アクションをも引き起こし、オリコン・インディーズ・チャートでは5週連続で1位を獲得するなど、新人としては異例のロング・セールスを記録している。楽曲の認知度の高まりを追い風に、昨年の夏は各地のイヴェントにも多数出演し、湘南乃風、INFINITY16、加藤ミリヤ、SEAMO、MEGARYUら、シーンの先輩達との共演も果たした。きっと自身にとっても大きな成長になったはずだ。ライヴの場数を踏み、また一回り大きくなった九州男が、昨年の締めくくりとしてリリースしたのが2ndミニ・アルバム『こいも俺ですばい』だ。mihimaru GTのhirokoとのコラボ曲「手紙。。」や、祖母への直接は伝えられなかった想いを綴った「dear grandma」などが収録された味わい深い1枚で、タイトルの「こいも」が示す通り、また1つ九州男の新たな一面が表現されていた。
　そんなインディーズでの数々のレコーディング、ライヴ経験を経た今、遂にメジャー第1弾シングル「1/6000000000 feat.C&K」をリリースする。フィーチャリング・アーティスト、C&Kとはミニ・アルバムを含め2度目の共演。この広い地球上で大切な人に出会えた60億分の1の奇跡を噛みしめながら、その幸せを永遠のものにしようと歌うラヴ・バラードだ。1stミニ・アルバム収録の「出会い。。」にも通じるピュアな世界観は、まさに九州男の真骨頂といったところ。19歳の頃にレゲエ・ミュージックに感銘を受け、2年間のジャマイカ滞在経験を持つ彼が生み出すトラックは、そのストレートで分かりやすい歌詞の力も手伝って、とても聴き心地が良く温かい。まさにレゲエが持つ安定的なテンポと包容力、そして安心感。彼がジャマイカで得たものが、そんなところに滲み出ているのかもしれない。
　時に「九州の魂を伝えるシンガー・ソングライター」とも称される九州男。地方出身のミュージシャンで地元への愛を音楽に込める人はたくさんいる。それは決して直接的な表現でなくとも、音の端々から、歌詞に選ばれる言葉の隅から、自然とこぼれ落ちてくるものだと思う。彼は今後、どんな風に「九州の魂」を私たちに伝えてくれるのだろうか。1stシングル「1/6000000000 feat. C&K」を聴きながら、ふと、その時が楽しみだなとも思った。

Text by 秦 理絵（編集部）