大滝詠一

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大滝詠一

2005年の『ナイアガラ・ムーン』の再発以来続いた第1期30周年
プロジェクト、その最後を飾る『ナイアガラ・カレンダー』が
遂に登場!オリジナルの1978年版は待望の初CD化!

(初出『Groovin'』2008年3月25日号)

 このところリイシュー盤の発売が活発で、CD市場はある意味エルダー層…つまり30代〜50代に支えられている感さえある。しかしこのエルダー層のユーザーは、今のダウンロード販売などといったノン・パッケージの音楽で育ったリスナーと違い非常に耳が肥えているだけでなく、ジャケットやライナーといったものにも思い入れ深い方が多いのが大きな特徴だ。アナログな感覚が最新のマスタリング技術と融合する時、デジタル・プレイヤーでは100%表現仕切れないアナログの質感とふくよかさ、そしてアナログ・レコーディングによる人間味といったものを知る人たちも納得の作品となって、かつての輝きを取り戻す。
 さて数多いリイシュー盤の中でも、強烈にリスナーから支持されてきたのが、Mr.ナイアガラ、大滝詠一の作品だ。1981年の大ヒット・アルバム『ロング・バケイション』、そして1982年の『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』(佐野元春、杉 真理とのオムニバス)、1984年の『イーチ・タイム』などが発売20周年を記念して今世紀に入って次々と再発されたのに続き、2005年からは30周年記念事業として『ナイアガラ・ムーン』やシュガー・ベイブの『ソングス』、『ナイアガラ・トライアングル Vol.1』(山下達郎、伊藤銀次とのオムニバス)、そして『GO! GO! ナイアガラ』『ナイアガラ CMスペシャル Vol.1 3rd Issue』『多羅尾伴内楽團 vol.1 & vol.2』が、大瀧自身のマスタリングによって次々再発されたが、今度は本来ならば昨年発売されるはずだった『ナイアガラ・カレンダー 30th Anniversary Edition』が遂に店頭に並んだ。
 本作のオリジナルは1977年12月に発売され、1ヶ月1曲ずつの計12曲を並べた好企画盤。1曲毎に季節感と様々なアイディアが織り込まれているのはもちろんのこと、アルバムを年に4作発表するなど最もアグレッシヴだった時期のナイアガラの音が詰まった、ファンにとっても特別な1枚だ。しかも嬉しいことに、今まで未CD化だったオリジナル1978年版がリマスターされ、1981年のリミックス音源と共に収められている。中には曲の冒頭が違う「青空のように」や波音を被せた「泳げカナヅチ君」「真夏の昼の夢」のように全く違うものもあり、時代によるミックス志向の違いや大瀧詠一の実験精神も楽しめる。プロデューサー、作家、アレンジャー、歌手、エンジニア…など様々な役割を一手にこなしていた大瀧詠一のトータル・アルバムである本作を最高の音で楽しめるなんて…。僕らは幸せな時代を生きていると改めて実感した。

Text by 土橋一夫(編集部)

『ナイアガラ・カレンダー 30th Anniversary Edition』
大滝詠一-J.jpg




Sony Music Records
発売中
CD
SRCL-5009
¥2,100(税込)

1977年12月に発売された、彼の70年代の代表作でもある本作がオリジナル・ミックス(初CD化)に1981年のリミックス音源を加えた30th Anniversary Editionで遂に登場!村松邦男、上原裕、山下達郎、井上 鑑、駒沢裕城ら豪華メンバーも参加し、大瀧作品の根幹を成すメロディアスとノヴェルティの両路線が詰まった必聴盤!

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