R.E.M.

ARTIST PICK UP

R.E.M.

それがロックの道筋となる…。多くのアーティストからリスペクトを受けるR.E.M.!
通算14枚目のスタジオ作は、ダイナミックなロックとじっくり聴かせるナンバーが
適所に配置された充実の1枚。今後展開されるであろう、ライヴ・ツアーも期待大!

(初出『Groovin'』2008年3月25日号)

R.E.M.-A.jpg まさに、彼らの歩みが不毛といわれる80年代のロック・シーンを変え、そこに続いた者が90年代以降のロックを牽引していったといえる。現在も活躍中の彼らに対して少々失礼だが、R.E.M.の印象はそんな感じだ。
 どうしても自分が生まれる前の、ロックが多種多様に変化していった黄金時代(1960〜70年代)の音を聴くことが多いのだが、R.E.M.の道のりはリアルタイムで辿ることができる。MTVという音楽を見る時代が到来し、より大量生産・大量消費に合わせてロックも分かり易さ、インパクト重視に偏っていった頃、全米のカレッジ・ラジオでは少しづつ地殻変動が起きていた。インディーズでも良質な本物の音が支持されだした(今となっては普通だが)頃、シーンの中心にいたのが彼らなのだ。その流れは過去にも何度かあったようにロックの原点回帰を促し、それは大きな流れとなってグランジ〜オルタナティヴ・ロックへと進んでいく。その中には自身の死をもって伝説となったカート・コバーンのニルヴァーナやトム・ヨークのレディオヘッドといった重要なバンドが存在するが、彼ら2人が影響を受けたと公言してはばからないのが、R.E.M.のマイケル・スタイプである。もちろんその間もR.E.M.は『アウト・オブ・タイム』『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』『モンスター』といった名作を立て続けにリリースし、その存在感は日増しに大きくなった。"世界で最も重要なロックン・ロール・バンド"と評される所以は、時代に風穴を開ける作品を何枚も発表し、なおかつ他のバンドに大きな影響を与え続けているからである。
 2000年以降の彼らも、コンスタントに活動を続けてきたが、最近の作品に見られる落ち着いた作風には90年代の活躍からみると、物足りないと感じる向きもあるのかもしれない。もともと、マイケル・スタイプの書くその詞の魅力が大きいだけに、ロックン・ロールという表現形態だけにとどまらないのは無理からぬことであるが、ギター・オリエンテッドなサウンドを期待してしまうファンが多いのも充分に分かる。昨今の音楽業界不振のあおりを受けて、メガヒットを期待するレコード会社からのプレッシャーは、よりヴェテランに向けられていると聞くが、果たしてR.E.M.においても例外ではないのであろうか。
 そこでニュー・アルバムである。どちらに寄っているかといえば硬軟織り交ぜたバランスのとれたアルバムではある。しかし、頭からの3曲と、最後の2曲におけるドライヴ感は格別だ。特に、どこか冷めた視点で描かれる詞世界と大マジのロック・サウンドとのギャップはR.E.M.節全開といった趣である。世間の期待をよそに、しっかり自分達の立ち位置はぶれてないのはさすがだし、もともと自分達のやりたいことだけを貫いてきたバンドであるが故に、変わろうはずもない。そこで試されているのは、彼らから投げられたボールを受ける我々だ。果たして今の我々にR.E.M.を受け止める耳はあるのか、ぜひ試していただきたい。

Text by 作山和教(宇都宮FKDインターパーク店)

『アクセラレイト』
R.E.M.-J.jpg




ワーナーミュージック・ジャパン
4月9日発売
CD
WPCR-12857
¥2,580(税込)

ライヴ・アルバムをはさんで、通算14作目のスタジオ・アルバムは、彼らのキャリアを総括するようなバランスのとれた作品。前半で飛ばし、中盤でじっくり聴かせ、後半一気に駆け抜ける構成はそのままライヴで活かされそう。3年半のブランクを埋める充実の1枚だ。

【R.E.M. 日本オフィシャルサイト】http://wmg.jp/artist/rem/

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