竹内まりや

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竹内まりや

デビュー30周年を迎え、ますます素敵に音楽の魔法をふりまく、竹内まりや。
既にドラマやCMで話題のナンバーが、今年第1弾シングルとしてリリースに。
彼女らしさ満載の必聴盤の登場だ!

(初出『Groovin'』2008年5月25日号)

竹内まりや-A.jpg このところ何気なく見聴きしているテレビやラジオから、竹内まりやの歌声がよく流れてくる。今年デビュー30周年を迎え、特にそれまであまり登場することの無かったテレビで彼女の姿を見るとき、僕は無条件で高校生の頃の感覚にトリップしてしまう。耳にしたそれが例え新曲だったとしても…。本当に音楽が好きで、浴びるようにして聴いた学生時代、その時の思いや感覚を今の時代に甦らせる不思議な力を持つ竹内まりやの音楽…そこには恐らく時代を軽く超越させてしまうだけの素敵な魔法が、沢山詰まっているのだろう。事実、1980年代のナンバーでも今の楽曲でも、そこに通底する彼女の姿勢や音楽に対する真摯な態度などは全く変わっていない。これだけ加速度を伴って変化を続けている日本のシーンにおいて、これは冷静に考えれば考えるほど驚きだ。先日NHKで放送された「竹内まりや〜SONGS1周年記念スペシャル〜」を見ていて、僕はこんなことを考えていた。そして物事のサイクルが更に速くなる現代日本だからこそ、確固たるものにすがりたくなる自分がいることも再発見した。
 しかし彼女の生み出す作品は、一種のスタンダード的な路線を歩んでいるように見えて、よく聴いてみると実は常に新たな切り口とアイディア、そしてポジティヴな精神がそこには内包されていることに気づく。今回リリースされたニュー・シングル『幸せのものさし/うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)』でも、それは顕著だ。両A面シングルとしてリリースされた本作は、共に豪華なタイアップが付けられているので、既に耳にされた方も多いことだろう。「幸せのものさし」はTBS系金曜ドラマ『Around 40〜注文の多いオンナたち〜』の主題歌で、主役を演じる天海祐希がゲスト・コーラスとして参加していることでも既に話題に。山下達郎、難波弘之、橋本茂昭らレギュラー陣に加え、村田陽一や山本拓夫らによるブラス・セクションやストリングスも加わり、ゴージャズなダンス・チューンに仕上がっている。等身大の女性心(おんなごころ)を描いた彼女らしい詞の世界、そして山下達郎によるお得意のアレンジ手法は、まさに職人的。後半の英語詞の掛け合いパートも見事だ。そしてもう1曲の「うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)」は、前出のNHKの番組でいち早くそのミュージック・ビデオが公開されたナンバー。2007「パンテーン×ゼクシィ」CMソングとしても流れていたので、発売を心待ちにされていた方も多いことだろう。これぞ"まりや節"といった趣のミディアム・バラードで、母親の立場から見た花嫁となる娘へのメッセージが感動的に綴られている。こういうシチュエーションで作られたポップスは日本ではあまり類を見ないと思われるが、50歳を過ぎてその歌詞の中でも潔く「五十路」を打ち出したパイオニアとしての彼女らしいユニークな視点に、改めて感心させられた。
 だが本当はポップスに年齢はあまり関係ない。もちろんそれまでの経験を踏まえて、というのは音楽を紡ぎ出す上での大きなバックボーンになり得るものだが、そのベクトルが後ろを振り返るものだけではつまらないものになってしまう。要は過去の経験や年齢を経ての思いなどと、今を生きるポジティヴな感覚とにどう折り合いをつけるのか…。その点、竹内まりやの音楽にはその両方をバランスよく配する絶妙の感覚が備わっている。冒頭で述べた彼女の音楽を聴いて高校生の頃にトリップしてしまう感覚というのは、恐らくここに起因しているのだ。そして彼女の歌を受け取る我々リスナー側も、常に新たな姿勢と変わらないものとをバランスよく感じ取ることの出来る、心と耳を持ち続けなければならない、と強く思った。
 竹内まりやの音楽の世界…それは僕らの現実と理想、過去と未来とを繋げ、そして気持ちや在り方の理想型を映す一種の鏡なのかも知れない。

Text by 土橋一夫(編集部)

『幸せのものさし/うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)』
竹内まりや-J.jpg



ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
Maxi Single
WPCL-10475
¥1,200(税込)

TBS系金曜ドラマ『Around 40〜注文の多いオンナたち〜』主題歌(天海祐希がコーラス参加)と、2007「パンテーン×ゼクシィ」CMソング、そして人気の「元気を出して」('08 New Remaster)やそれぞれのカラオケを収録したニュー・シングル!彼女ならではの詞の世界とメロディ、山下達郎による絶妙のアレンジがマッチしたポップスの理想型がここに。ジャケの切り絵は児玉清の作品。

※初回特典として、竹内まりや直筆歌詞付き楽譜(「うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)」)を封入。

【竹内まりや オフィシャルサイト】www.smile-co.co.jp/mariya/

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