中島みゆき

ARTIST PICK UP

中島みゆき

世代を超えたリスナー、ミュージシャンに、
愛され、リスペクトされ続ける歌姫・中島みゆき。
その歌の神髄をあますところなく伝えるライブ録音…。

(初出『Groovin'』2008年6月25日号)

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 まず、ジャケットが目を惹く。4つのディケイドにまたがってチャート1位をとったことがあるほどの彼女だから、それぞれの世代それぞれに中島みゆきのイメージがあるはずだが、この写真の彼女がやはり原点ではあると思う。それにしても、一見なんでもないメンズ・ライクの白いシャツに青いギター、似合いすぎる。孤高の佇まいというべきか、凛々しさの中に滲む拭いきれない孤独感というものを感じて、しばし目が釘付けになった。
 歌うたい・中島みゆきの魅力をストレートかつ明快に伝える実況盤。昨年の「中島みゆきコンサートツアー2007」から、東京国際フォーラムAでのライブ音源11曲を収録している。70、80、90年代に発表された楽曲も収められているものの、最新作『I Love You, 答えてくれ』からのナンバーが中心で、ヴェテランにありがちな往年のヒット曲のオンパレードといった趣ではないのが彼女らしい。同時発売となる自身初の"コンサートDVD"にファンの注目が集まるのは仕方がないとしても、音以外になんの情報もなく、歌の神髄と1対1で向き合えるライブ・アルバムの存在は貴重だ。
 それにしてもこの磐石の歌声はなんだろう。歌手としての信念が成せる業か、はたまた天から与えられた不変の才覚なのか。力強く、そして弱々しい、強烈なまでの人間臭さを歌声だけで伝えてくる様は圧巻というほかにない。どんな男よりも男らしく、相変わらず"ダメなあたし"が、時として崇高な存在にもなりえてしまう。中島みゆきという人が独自の言語感覚とポピュラリティに長けた優れたソングライターであることは誰もが認めるところだが、ことライブ音源という彼女の"生身"から痛烈に発せられているのは歌い手としての気概だ。見た目の演出に頼らずとも、歌だけでいいのだと思わせる瞬間が何度もある。
 とはいえこのアルバムで特筆すべきはやはりCDのみに収録されている3曲だろう。「ホームにて」「蕎麦屋」「EAST ASIA」は、ツアーを前に彼女の公式サイトで募った<コンサートで聴きたい中島みゆきの歌>により選ばれたもの。ツアーでは日替わり曲として披露されたこれらの曲がCD限定収録になったのにはどんな意図があったか計り知ることはできないが、今、この時代に聴衆の前で歌う意味とそれを音源として残す意味が、この3曲にはあるのだと思う。このツアーには親子2代で参加したファンも多かったと聞く。未だ現在進行形の彼女自身と、時代と共にその意味合いを深めていく曲が、強制でもなく回顧趣味でもなく自然な形で時代を超えれば、この国のポップ・ミュージックはまだまだ捨てたものではないのかもしれない。

Text by 篠原美江

『歌 旅 -中島みゆきコンサートツアー2007-』
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ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売中
DVD(2枚組)
YCBW-10013〜4
¥7,350(税込)

中島みゆき初のコンサート・ライブDVDが登場。昨年9月より全国32公演が行われた「中島みゆきコンサートツアー2007」から東京国際フォーラムAでの模様から2枚組の全19曲を収録。演奏シーンのみならず、各会場のバックステージや移動中のオフショットも多数収録。初回分は三方背BOX仕様、初回終了後はデジパック仕様。

『歌 旅 -中島みゆきコンサートツアー2007-』
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ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売中
CD
YCCW-10047
¥3,150(税込)

東京国際フォーラムで行われたコンサートの模様を収めたライブ・アルバム。同時発売のライブDVDと合わせて、演奏された全22曲が完全再現される。「ホームにて」「蕎麦屋」「EAST ASIA」「地上の星(ライブ・カラオケ・ヴァージョン)」はCDのみの限定収録。

【中島みゆき OFFICIAL SITE】http://www.miyuki.jp/

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