ベック

ARTIST PICK UP

ベック

ポップ・ミュージックの新たなるフェイズ。
天才と異才が作り出す34ミニッツのウォール・オブ・サウンド。
深い響きにココロから酔いしれよう。

(初出『Groovin'』2008年7月25日号)

ベック-A小.jpgPhoto By Autumn DeWide ベックのアルバムは「悩みの種」である。正確に言うと、ベックのアルバムを「どう聴くか?」でいつも悩む。いかに彼の音楽と対峙するか、まさに格闘そのもの。それを職業にしている方の苦悩は計り知れないと心中察するところであるが。でも、本当にベックの作り出す音楽は捉えきれない。とにかくヒネクレ度が過ぎるのだ。頭で聴こうとすると楽しめないし、感覚で聴こうとすると真意が掴めない。彼の最大の魅力はココにあると思っているのは私だけだろうか?
 今までのアルバムを振り返ってみても、その変幻自在ぶりに翻弄されてきた。1994年『メロウ・ゴールド』でメジャーに登場。独特な言語感をビートに乗せた音がかなり斬新だった(同時期、インディーでもアルバムを発売。二束のわらじ状態)。1996年『オディレイ』では巧みなサンプリングでサウンド・ミクスチャーしグラミー賞も受賞。1998年『ミューテイションズ』、それに続く1999年『ミッドナイト・ヴァルチャー』では、ソウル・ファンク的サウンドで音楽的な引き出しの多さを披露し、2002年『シー・チェンジ』はフォーク色が強くかなり内省的な作品となった。2005年『グエロ』で原点回帰を。そして、2006年の前作『ザ・インフォーメション』は、より綿密にサウンド構築をと、これだけ自己編集・変革ができるアーティストも稀だと感心すらする。
 そんなベックのニュー・アルバム『モダン・ギルト』だが、その期待は良い意味で裏切られた。収録曲全10曲、生粋のポップ・アルバムだ。"生粋"と表現したのは、いわゆるアルバムの黄金フォーマットに則っているから。無駄なボートラ不要、一気にラストまで聴かせてしまう。サイケデリックな感覚に溢れ、深いエコーとリズムの鳴り方がかなり印象的だ。あのナールズ・バークレイのデンジャー・マウスの素晴らしい仕事ぶりにも感心。その他、女性シンガー・ソングライターのキャット・パワーの参加も見逃せない。今作は自身のレーベル、ILIADからのリリースとなったことも注目すべき点として追記しておきたいと思う。

Text by 松本昭仁(すみや本社 営業グループ)

『モダン・ギルト』
ベック-J.jpg




ILIAD / HOSTESS
8月6日発売
CD
HSE-70031
¥2,490(税込)

楽曲の濃密さが際立ち、どの曲も1つとして同じ印象を与えない。ネットで先行試聴できる「ケムトレイルズ」に代表されるように、60'sサイケデリック・ポップに彩られた全10曲。歌詩対訳/ライナーノーツ付き、オリジナルステッカー封入、日本独自パッケージ仕様。

【ベック 公式サイト(英語)】http://www.beck.com/

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