稲垣潤一

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稲垣潤一

名曲が映し出す様々なシーンの中で出会う男と女。
互いに惹かれ合いながら新しい世界を作り出す2つの歌声。
シンガー、稲垣潤一の存在感を新しい着眼点で提示する"デュエット・アルバム"。

(初出『Groovin'』2008年12月25日号)

稲垣潤一-A.jpg TK、kjといった略称。今やごまんといる"クリスタル・ヴォイス"。そのどちらもの先駆けが御大、小田和正と共に稲垣潤一、この人ではないかと思う。濡れたツヤと透明感に溢れた歌声に加え、1983年のヒット作『J.I.』は、その存在を強く印象づけるのに十分だった。そして自作曲にこだわらなかった稲垣はスタイリッシュにフィクションを歌い、聴く者に豊かな"想像"を与えた。クールな歌声は曲の雰囲気を損ねることなく、1篇1篇にドラマを描いてみせた。自作偏重の方向にすっかり傾き「リアルであること」が好まれる現代においても、その輝きは失われることはない。
 本作は全曲カヴァーで構成された企画作。ブームを超え、ヴェテラン、若手問わず、すっかりカヴァーに侵食されつつあるJポップ・シーンにおいてはもはや珍しいことではないし、「誰もが知ってるあの名曲」ばかりをチョイスしていることは今回も例外ではないが、この作品の大きなこだわりは"男女のデュエット形態"でのカヴァーにある。
 訳ありげな男女を匂わせるモノクロのジャケットにこのタイトルがつけば、つい演歌的なものを想像してしまうが、さにあらず。むしろ、男と女の云々を逸脱した青春のポップス名曲集といった趣きだ。選曲からして、いわゆるスナック系デュエット・ソングにはなるはずもないが、ここで打ち出された"新しいデュエットの形"は、往時と比べてもまったく衰えをみせない稲垣の瑞々しい歌声が結果的に導いたともいえるだろう。アレンジは鳥山雄司、清水信之、佐藤準といったニューミュージック時代を支えた腕利きが担当。ニューミュージック〜AORの感触を残しつつも古臭さを感じさせない仕上がりで、あくまでも稲垣のイメージを尊重した的確なプロダクションとなっている。
 稲垣が担う「男声」に対し、難航したという「女声」のセレクトは若手からヴェテランまで多岐にわたった。太田裕美は「木綿のハンカチーフ」をセルフ・カヴァーし、辛島美登里の持ち歌「サイレント・イヴ」は大貫妙子が、辛島自身は今井美樹の「PIECE OF MY WISH」を歌うという変則的な試みも。自身の持ち歌「セカンド・ラブ」をTRFのYU-KIが歌った中森明菜、その本人はといえば、依頼された曲ではなく唯一の稲垣オリジナル曲となった「ドラマティック・レイン」を自ら逆指名。その自信を裏付ける歌唱を披露するというトピックも用意されている。時に複雑なハモリをメインにおいたヴォーカル・アレンジも見受けられるが、やはり深い印象を残すのはソロ・パートに比重をおき、ポイントをしぼってハーモニーを配置した「サイレント・イブ」「あの日にかえりたい」「人生の扉」といったあたりだろうか。だがいずれもがヴォーカリストとしての自我を強調することなく、デュエットとしての在り方を全うしている。そこがこのアルバムの聴き易さ、新鮮さに直結しているのだと思う。
 もちろんこのアルバムの成功は、シンガー稲垣潤一の堂々たる健在ぶりがあってこそのものである。珠玉のオリジナル・アルバムを再び、との思いが、ここでいっそう強くなったことを最後に付け加えておきたい。

Text by 篠原美江

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デビュー26年目を迎えた稲垣潤一が11組の歌姫と共に名曲の数々をリニューアル・カヴァーした全曲新録音のデュエット・アルバムをリリース。太田裕美との「木綿のハンカチーフ」、大貫妙子との「サイレント・イヴ」など誰もが知っているあの曲が、男と女の二声で甦る。

【稲垣潤一 Official Site】http://www.j-inagaki.com/

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