土岐麻子 of Groovin2009

SPECIAL INTERVIEW

土岐麻子

同世代だからこそ分かる感覚が最大限に生かされた、これぞまさしく理想的な「お茶の間ポップス」が完成!そこでニュー・アルバム『TOUCH』を作り上げた土岐麻子への待望のインタヴューが実現しました。彼女が目指す21世紀型ポップ・ミュージックとは?そして『TOUCH』の制作過程の話題や参加メンバーとの不思議な繋がりなど、興味深いエピソード満載でお届けします。

(初出『Groovin'』2009年1月25日号)

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−−:待望のオリジナル・アルバム、素晴らしいものが出来ましたね!
土岐麻子:ありがとうございます。元々私のソロ・デビューがジャズ・アルバムだったのでオーガニックで優しい印象を持たれがちだったんですけど、この作品でより音楽的な意味でもポップになれましたし、多くの人に届けられる作品になったかなと思います。
−−:今作のテーマは何ですか?
土岐:最初に「お茶の間」というキー・ワードを出したんです(笑)。Cymbalsの頃の「聴いてくれる人だけ、聴いてもらえればいいや」っていうところから「聴くつもりが無かった人にも届けたいな」というところに意識が変化したんですね。なぜかと言うと、徐々に「ファンタジア」(『TALKIN'』)を出したりとか、『Summerin'』で有名な曲をカヴァーしたりして反応が大きくなってきた時に、意外と私の声や音楽性が広く受け入れられるかも知れないって思ったんです。反応も色々とあったし、元々音楽で色々な人を巻き込んで1つのムーヴメントを起こせたらいいなって思っていたんで、その輪が広がればもっと楽しいだろうなって思って。だから聴くつもりが無かった人…「お茶の間に届ける」ということが今回のテーマになりましたね。そんな時にユニクロのTVCMのお話を頂いて「How Beautiful」を作って先にシングルを切ることになって。この時に「お茶の間」を想定して作ったんですよね。それがアルバムを作る前のいいシミュレーションになりました。
−−:さて『TOUCH』ですが、制作はどのくらいの期間で?
土岐:先ず、シングルを夏に録りまして、その後10月から本格的にスタートして11月一杯まで。丸々2ヶ月ですね。レコーディングはライヴのメンバーを中心に、あとはアレンジャーによって意志疎通のし易い方…例えば奥田(健介)さんアレンジの曲では、NONA REEVESの小松(茂)さんがドラムとか、川口(大輔)君のアレンジ曲だとベースが大神田(智彦)君とか。「Waltz For Debby」は渡辺シュンスケ君がアレンジしてくれたので彼がピアノを自分で弾いて、坂田学さんがドラムを叩いてくれて。
−−:ということは、ほぼ同世代のミュージシャンですね。
土岐:そうなんです。すごくやり易いんですよ。まず出来上がった曲を聴いて、そこからイメージをひねり出して詞にするんですけど、まず書きたいことを思うように書いてみるんです。そして一旦出来たところで批判的な目で見てみるんです。「ここは分かりづらいんじゃないか?」とか。それで分かり易い表現に差し替えるんですけど、上がったら今度は川口君とか奥田さんにそれを送ってチェックしてもらうんです。すると注文が入って返ってくるんですよ。それを何回か繰り返すんです。「How Beautiful」なんかは結果半分ぐらい書き換えましたね。
−−:さて2人のプロデューサーとの関わりですけど…。川口さんとは?
土岐:小学校の同級生です!川口君は小学校6年生の頃にはロスに引っ越してしまったんで、もう会うこともないと思っていました。それから十数年ぐらい経って、新聞での記事で川口君の名前を見て、そのうちに中島美嘉さんの曲に川口大輔っていうクレジットがあって聴いた時に「絶対にそうだ!」って思ったんですよ。その後にJazztronikのライヴで楽屋に行ったら「はじめまして、川口大輔です」って挨拶している人がいて、顔を見たら「やっぱりそうだった!」って。奥田さんとは大学の時に隣のサークル同士だったんです(CymbalsとNONA REEVESが)。当時NONAのテープを聴いた時にすごくいいなって思って、ライヴにも行っていたりして。それ以来の繋がりです。
−−:キリンジの堀込泰行さんとは?
土岐:「FOOLS FALL IN LOVE」を奥田さんが作ってきてくれた時、男女ヴォーカルがいいね、誰と歌おうかっていう話をして、丁度その頃キリンジのライヴを見に行って「泰行君の声って本当にいいな。一緒に歌ってみたい!」って思ってお願いしたんです。
−−:ヨハン・クリスター・シュッツさんが「Let the sunlight in」を書かれたのはどういう経緯で?
土岐:今作のA&Rの人がヨハンの音楽が好きで、来日した時に街で偶然シュッツを見かけて話しかけて、たまたま私の『TALKIN'』のサンプルを渡してくれたそうなんです。そうしたら後でヨハンから「すごくいいアルバムだったから、何か一緒にやる機会があったらいいね」っていうメールが届いて書き下ろしてくれたんです。(「How Beautiful」を作曲した)さかいゆう君も同じような経緯で書き下ろしてくれて。それから「FOOLS FALL IN LOVE」の作詞をしたグディングス・リナちゃんは、『TALKINユ』の時にも書いてくれたんですけど、この曲は乗る言葉によって全然雰囲気が変わるなって思ったんですね。ノリとしてはR&Bみたいな譜割りで英語的な言葉遊びをしたいって思ったんです。何よりリナちゃんの書く詞がすごく好きですし!「ふたりのゆくえ」を書いてくれた、くるりの岸田(繁)君とは、私がくるりのシングル(「さよならリグレット」)とその後京都でのライヴに参加させてもらって、その時に書くって言って下さって。実は私は2008年で歌手活動10周年だったんですよ。10年やってきてふと周りを見回したらそこに信頼できる人たちがいて、その人たちと一緒に今回作ったという感じですね。
−−:土岐さんの音楽って例えばシティ・ポップ的な呼ばれ方をすることも多いと思いますけど、その辺りの意識って持って作っておられるんでしょうか?
土岐:例えばサウンド的な部分では、そういった部分が出ているとは思いますね。ただそれは無意識にであって、ああいう感じのこういう音楽でとか、そういった部分は段々無くなってきていますね。シティ・ポップというものの捉え方が、私としては音楽のジャンルではないと思っているんですよね。それはシーンの1つであって。同世代と作るという事と、現実とファンタジーとのバランスっていう、そこが私なりのシティ・ポップ感でもあるんです。ノスタルジーではなくて、今の時代でその精神を受け継ぎたいと思っているんです。
−−:では、2009年はどんな感じで行きたいですか?
土岐:もっとファンタジックに行きたいですね。土岐麻子の歌を聴いて下さいというよりも、ちゃんと1つのシーンを作りたいというか…。自分のための音楽じゃなくて、お茶の間を巻き込んで時代のための音楽を作りたいです。
−−:最後に『Groovin'』の読者にメッセージをお願いします。
土岐:『TOUCH』はライヴ映えする曲が多いと思いますので、是非ライヴへも足を運んで下さいね!お茶の間を意識して作ったので、心に届き易い曲ばかりだと思いますので。

インタヴュー & 構成:土橋一夫
(2008年12月25日/avexにて)

『TOUCH』
土岐麻子-J.jpg
rhythm zone
発売中
CD
RZCD-46095
¥2,500(税込)
本人出演のユニクロTV-CMソング「How Beautiful」や、日産『TEANA』TV-CMソング「Waltz For Debby」を含む最新オリジナル・フル・アルバム。川口大輔と奥田健介(NONA REEVES)をプロデューサーに迎え、同世代だから出来る今のポップ・ミュージックを完成させた好内容。岸田繁(くるり)の書き下ろしや堀込泰行(キリンジ)とのデュエット曲も!

【TOKI ASAKO OFFICIAL WEBSITE】http://www.tokiasako.com/

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