ザ・ゴールデン・カップス of Groovin2009

ARTIST PICK UP

ザ・ゴールデン・カップス

昭和40年代中期、一世を風靡したザ・ゴールデン・カップス。
あの時代、こんな音を出していたバンドが他にいただろうか?
その本質を正しく理解するために…。

(初出『Groovin'』2009年1月25日号)

ザ・ゴールデンカップス-A4C2.jpg 僕だけかもしれないが、もしタイムマシンがあったならどうする、と自問することが多々ある。もっとも深刻なそれではなく、たとえば、1968年の横浜に戻り、本牧界隈を丹念に歩き回りたい、ゴールデン・カップスの東芝初回盤(赤盤)を買いたい、というようなことだ。それって一体…。
 そう、昨年末にゴールデン・カップスのリーダーであるデイヴ平尾が亡くなってから、どうにもカップス・モードが基調にあってか、夢想することも、横浜とか本牧とかが絡んでくる。そればかりか、先日は35年ぶりの友人との再会をすべく横浜に足を運び、16時から23時まで飲み続けたのだが、そこでもデイヴ平尾、そしてカップス話は出た。曰く「デイヴは県立緑ヶ丘でしょ」とか「加部さんは武相?」とか、果ては「浜中学出身のミッキー吉野は後輩の間じゃ伝説だった」、遂にはぐっとローカルに「3組のNはエディ藩にそっくりだったじゃん」…なんてね。
 それにしてもゴールデン・カップス。昭和40年代中期、一世を風靡したグループ・サウンズという括りに投げ込まれて久しいが、GS=ちょっと危ういアイドル・エレキ・バンド、と受け取る向きは、僕と同世代にも多いので、ここで改めて正しておきたいが、GSで最も広範な人気を誇ったタイガース(沢田研二在籍)ですら、ジャズ喫茶(今のライヴ・ハウス)のステージではストーンズをはじめ洋楽のカヴァーを主たるレパートリーにしていて、ましてやカップス。これは同時代の米国、ソウル・サヴァイヴァーズの1枚目あたりに通底するブルー・アイド・ソウルならぬブラック・アイド・ソウル・バンドであり、同時代のエリック・クラプトン同様、米国深南部のブルースに限りない憧憬を持った最初のメジャー・バンドだったのだ。だから彼らの看板曲の「長い髪の少女」だけを見ていては駄目。なぜならば、当時のレコード会社の思惑は、大きなヴォリュームとなっていた当時のナウなヤング(=団塊世代)をターゲットに大きな商いをすることにあったから、装いは欧米ロック・バンド、けれども中味はグッと平易な青春歌謡延長線。しかも職業作家による楽曲提供というスタイル。上記作品も(名曲ではあるが)まさしくそれだ。しかし、カップスの本質はブルースやロックにあるのだから、今は亡きデイヴ平尾を正しく理解するためにも読者諸兄よ、ここに挙げた5つの作品を心して味わってもらいたいものだ。まず最初はDVDから始め、個々のCD作品に当たるのが良いだろう。それにしてもオリジナル・アルバムがほとんど廃盤とは…ぜひSHM-CD化を望みたい。

Text by 鷲尾 剛

ザ・ゴールデン・カップス
『THE GOLDREN CUPS Complete Best "BLUES OF LIFE"』
BLUES OF LIFE-J4C.jpg




EMIミュージック・ジャパン
発売中
CD
TOCT-25537
¥2,500(税込)
ただのベストとは違うブルースな1枚。限りなく"黒い"音に必ずや感動すること間違いなし。40年前にこの音を出していたバンドが他にあっただろうか。職業作家の書いたシングル曲と当時の最先端洋楽カヴァーが違和感なく同居。泣かずにいられない。デイヴ歌唱の作品と共に、唯一の米国籍メンバーであったケネス伊東の存在感を今さらながら確認できる名曲「ジス・バッド・ガール」収録に拍手。

ザ・ゴールデン・カップス
『2001 millennium+1 BEST』
2001 millennuim-J4C.jpg




EMIミュージック・ジャパン
発売中
CD
TOCT-10760
¥2,000(税込)
シングル曲を中心に組まれたベスト・アルバム。彼らの歌謡曲ですら強引(傲慢)にロックさせてしまう恐るべき実力を味わうには最適。ファズのかかったエディ藩のギター、踊り狂う?ルイズ・ルイスのベース。それと拮抗するように唸る、あるいは、コブシすらまわすデイヴのヴォーカル。それにしても惜しまれるのはジャケット。メンバーの顔さえわかりづらい。解散前のシングルなども聴ける1枚だけにちょいと残念。


デイヴ平尾
『一人 -コンプリート・ソロ・コレクション-』
デイヴ平尾-J.jpg
YAMATO RECORDS
発売中
CD(2枚組)
YRCL-6001
¥3,600(税込)
たった一度の人生を駆け抜けたデイヴ平尾が、カップス解散後に残したソロ作品を一堂に集めた2枚組CD。2枚目はキングレコードからリリースした唯一のソロ・アルバムを丸々収めてある。また1枚目は長いこと廃盤でCD化が望まれていたシングル曲などで構成。中でもTV映画『傷だらけの天使』(萩原健一、水谷 豊:出演)最終回に使われた「一人」はデイヴのソロ作品中の白眉。

ザ・ゴールデン・カップス
『ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム
       パーフェクト・エディション』
ワンモアタイム-J4C.jpg
ポニーキャニオン
発売中
DVD(3枚組)
PCBP-51500
¥7,140(税込)
カップスの全貌を当時の貴重なフィルムや証言で追ったドキュメンタリー映画。後半はこの映画のために再編したデイヴ以下5名のメンバーによる奇跡!のライヴ。DVD化に際してはボーナス映像や丁寧なブックレットが付属するなど盛り沢山な内容となった。単にカップス云々ではない60年代後半の時代の雰囲気を味わうためにもマストな内容となっている。見ごたえあり。本当は映画館で見て欲しいです。


V.A.
『GSフォーエヴァー100』
GSフォーエヴァー100-J4C.jpg
テイチクエンタテインメント
発売中
CD(4枚組)
TECS-50381〜4
¥5,000(税込)
ゴールデン・カップスと同時代のグループ・サウンズ代表曲を4枚!のCDにコンパイルした素晴らしいアルバム。GSにまつわるリイシューでは質感の高さで群を抜くクロニクル・レーベルの仕事だけあって、聴いて楽しい、(曲目解説を)読んで為になる、なおかつお買得と、三拍子そろったCDである。英米に比肩しうるブツから、ちょっとトホホなブツまで各種満載。全国の図書館にも常備して頂きたいです。

inserted by FC2 system