アンジェラ・アキ of Groovin2009

ARTIST PICK UP

アンジェラ・アキ

生きること、愛することへの「答え」を探している、すべての人へ。
自分で見つける答え、その大きな手がかりとなるラヴ・ソング13編。
コンセプチュアルな作品としてひとつの到達点に達したアンジェラ・アキ、最新作。

(初出『Groovin'』2009年2月25日号)

アンジェラ・アキ-A.jpg 「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」を初めて聴いたとき、チャートを賑わしたどんな「頑張れソング」も「頑張らなくていいよソング」もちょっと敵わないと思った。15年前の僕と15年後の僕の対話形式で、自分が自分に送るメッセージとしての歌になっているこの曲は、その発想の新しさはもとより、愛をもってキッパリとした現実を突きつける真摯さが何より印象的だ。くじけずに生き続けた先にも苦しいことは待っているということ。その一方で、この先に待っているのは決して不幸なことばかりではないこと。誰に言われるでもなく自分で生き、自分で自分自身の未来を見届けようということ。"自分で自分を信じる"ということが、どういうことかということ。生きているというよりは、ただ生きてしまっている人々に向けて、誰もが歌にしたかったであろう、誰もが聴きたかったであろうメッセージを、こんな平易な言葉で形にした歌を、ほかに知らない。
 全13曲中、唯一のシングル曲である「手紙〜」を冒頭に置いた最新作。「手紙〜」がヒットした背景とアンジェラという人のキャラクターを考えれば、ややもすると"お姉さんにしたいNo.1"的存在を打ち出した内容になるという可能性も考えたが、さにあらず。聴き進めていくほどに成熟したひとりの女性としてのリアリティが見えてくる。そんな作品である。
 洋楽の対訳のような独特のリリック、日本的な要素と洋楽的な要素が絶妙にミックスされたメロディとピアノを主軸においたサウンド・プロダクションは、相変わらず高いスタンダード性をもつ。そこに多彩な情景と、主人公の感情に沿った豊かな歌心が加わり、バラード〜ミドル・ナンバーが中心ながらも飽きさせない。「Knockin' On Heaven's Door」「We're All Alone」といった洋楽曲の日本語詞カヴァーは自作曲のように違和感なく作品に溶け込み、ベン・フォールズとの共作曲「Black Glasses」は終盤のアクセントとして存在感を放つ。
 シングル曲に左右されることがないからか、コンセプト・アルバム的な色合いも濃厚だ。道ならぬ恋の只中で揺らぐ女心、初めて愛を知った喜びと初めて失った愛の追憶など、さまざまな愛の形とそれに伴う情感、疑問、気付きをノンフィクションともフィクションともとれるタッチで丁寧に描いていく。ときにネガティヴな単語を用いることも厭わない。そうやって、誰か=あなたに、より踏み込んで、互いの人生観を重ね合わせていく。それが今の彼女の在り方なのかもしれない。ハイライトはアルバム後半、10分半に及ぶ大作「レクイエム」だろう。さながらひとり音楽劇といった様相のこの曲は、「人間は死を受け入れて初めて、これまでのささやかな幸福を知るものだ」という人生究極のテーマを歌った壮大なファンタジー。聴後、感動とも放心ともつかない状態の中に、強烈な叫びだけがいつまでも残った。
 トータル・タイム70分。神様でも占い師でもないシンガー・ソングライターとしてのメッセージ、その精一杯を、彼女はこのアルバムに注ぎ込んでいる。

Text by 篠原美江

『ANSWER』
アンジェラ・アキ-J.jpg



Epic Records
発売中
CD
ESCL-3170
¥3,059(税込)

★収録曲
1.手紙 〜拝啓 十五の君へ〜 / 2.Knockin' On Heaven's Door / 3.ANSWER / 4.Somebody Stop Me / 5.ダリア / 6.Final Destination / 7.Our Story / 8.黄昏 / 9.We're All Alone / 10.リフレクション / 11.レクイエム / 12.Black Glasses / 13.ファイター

ゴールド・ディスク獲得の大ロング・セラー「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」、映画『ヘブンズ・ドア』主題歌「Knockin' On Heaven's Door」を収録した待望の3rdアルバム。

【アンジェラ・アキ 公式サイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AngelaAki/

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