HYDE of Groovin2009

ARTIST PICK UP

HYDE

HYDEが初のベスト・アルバムをリリース。
中島美嘉への提供曲「GLAMOROUS SKY」の英詞セルフ・カヴァーも含む全17曲には、
HYDEの独自の存在感と世界観が濃縮かつ濃厚に、高純度でシンクロする。

(初出『Groovin'』2009年3月25日号)

HYDE-A.jpg HYDEほど世界観、存在感が唯一無二なアーティストは世界中を探してもいないと思います。世界中にファンがいるモンスター・バンド、L'Arc~en~Ciel(以下、ラルク)のヴォーカルであることや、中世のヨーロッパから飛び出したような端正なルックス…それもあるけれど、僕は彼の書く楽曲に思うところがあるのです。その始まりはソロ活動前、ラルクの初期の名曲「I'm so happy」を聴いた時でした。ご存知の方も多いように、"この身を失ってもあなたの幸せを願う"という世界観が強烈に印象に残り、それ以来、HYDEの書く歌詞、曲が気になって仕方なくなったのです。
 HYDEがソロ活動をはじめた頃、なぜソロ名義で音楽を作ろうと思ったのか?という問いに「ひとりの部屋が欲しくなった」と答えていたのを憶えています。あれから7年。今回のベスト・アルバムを聴いて、僕は、ようやくHYDEの部屋が完成したんだという気持ちになりました。1stアルバムで真っ白な部屋を手に入れ、2ndアルバムで原色の明るい色と暗い色を壁一面に塗りたくり、3rdアルバムは混じり合った色に、更に独自の色を塗り重ね…そして、このHYDEという部屋が完成した、と。
 HYDEのアルバムを聴いていると、まず先にアルバムの大まかな世界(イメージや風景)があって、その中に登場する住人が、それぞれの楽曲であるのではないのかと思うことがあります。各アルバムで例えるならば『ROENTGEN』=純真で無垢な子どもたちの世界、『666』=無邪気さと衝動性に満ちた少年の世界、『FAITH』=世界や神に矛盾と怒りと覚えても希望を捨てない混沌の大人たちの世界。そして、そんな幾重にも塗り重ねられた色の世界と、その住人が支配する部屋=HYDEの世界観はもはや芸術の域です。
 今回リリースされたベスト・アルバム『HYDE』。「EVERGREEN」で幻想的な美しさとロック的激しさを共に奏で、「HELLO」ではハードとポップの間を突くメロディ・アレンジと疾走するスピード感をひとつにし、「COUNTDOWN」はヘヴィなサウンドの中に終末へと向かう人類への警鐘を鳴らし、そして大ヒットなった中島美嘉への提供曲「GLAMOROUS SKY」を自らの部屋に呼び戻し、新たな命が吹き込まれた世界観を築いています。幾重の色、様々な世界、意志を持つ楽曲たちが溶け込んで、ようやくHYDEによって完成した部屋のドアは開かれます。あとは僕らが踏み込むだけです。ただ、気を付けてください。これはあまりにも美しく、重厚な部屋なので、出口を見失うかもしれません…。

Text by 藪上 逸

『HYDE』
HYDE-J.jpg


Ki/oon Records
発売中
CD
KSCL-1446
¥3,059(税込)
HYDEが自身の名を冠した待望のベスト・アルバム。中島美嘉への提供曲「GLAMOROUS SKY」の英詞セルフ・カヴァーを含む全17曲を収録。

【HYDE公式サイト「HYDEIST」】http://www.hyde.com/index2.html

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