Utada of Groovin2009

ARTIST PICK UP

Utada

あの全米デビュー・アルバム『EXODUS』から5年。
湧き出る自信に基づいて、より自由にUtadaの音楽の追求した、
待望の2ndアルバム『This Is The One』!再び全米の音楽シーンに挑む。

(初出『Groovin'』2009年3月25日号)

Utada-A差し替え0312.jpg ひるまない、果敢なアーティストだと思う。あの全米進出アルバム『EXODUS』から5年、Utadaの2ndアルバムがいよいよリリースされた。かつて2004年9月8日、Utadaが初めて英語圏のリスナーに向けて発表した1stアルバム『EXODUS』。持ち前の高いソングライティング技術はさることながら、まだ見ぬ世界への進出を目前に控えた意気込みを多分に感じさせるその内容は非常に実験的で、趣向を凝らしたポップ・アルバムという印象だった。当時21歳。ともすれば、安定や惰性に身を委ねても良いだろうに、それを決して許さないのがUtadaの愛すべき個性だと思う。そして、自身の可能性を賭けた貪欲なチャレンジは今も続いている。『EXODUS』の貴重な経験を経た今、あの頃の心境を冷静に分析できるようになった26歳のUtada。2ndアルバム『This Is The One』は気負いや不安から開放された、より成熟した自由なアルバムになったのではないだろうか。
 この原稿を書いている時点で聴けるのはMySpaceで試聴できる1stシングル「Come Back To Me」のみ。クラシカルなピアノのイントロから始まるR&Bテイストのスロー・バラードだ。アルバムには他に、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」をカヴァーした「Merry Christmas Mr.Lawrence - FYI」を収録。この曲がアルバムの中でかなり重要な役割を果たし、現在のUtadaを紹介する上で相応しい楽曲であるとのこと。それと対照的な爽やかなナンバーとしては、アルバムに収録されているヴァージョンのヴォーカルはほぼ全てデモとして録音された音源を使っているという「Apple And Cinnamon」、Utada自身が最も気に入っている「Me Muero」は遊び心に溢れ洗練されたナンバーだとか。今作に関してUtadaは次のように、オフィシャルにコメントを寄せている。「私は基本に戻りたかった。ギミックじみたものじゃなく、ただ率直で自信に満ちていて、ユーモアのセンスを備えていて。自分がやっていることに私はとことん確信を抱いていたし、とにかくより大人になれた…ここにきてようやく」と。とても頼もしい言葉だ。逆に『EXODUS』の頃については「自信が欠落していた。力みすぎて、自然じゃなかった」とも語る。個人的には、どちらも彼女であることには変わりないし、不自然になってしまうことも、未知への挑戦である以上は自然なことだと思う。強くもあり、一方で人として当然脆い部分もあるという、それだけで魅力的なUtadaのパーソナルには違いないのだから。そんな私自身の想いや、自身の1stアルバムへの評価はさておき、あの『EXODUS』を経た今、『This Is The One』はUtadaが確固たる自信をもって挑んだという点で、改めて自己紹介的な意味を持つアルバムになりそうだ。

Text by 秦 理絵(編集部)

『This Is The One』
V系メーカー.jpg

ユニバーサル インターナショナル
発売中
CD
UICL-1088
¥3,000(税込)
『EXODUS』以来5年ぶり、待望の2ndアルバム。プロデューサーにはNe-Yo、リアーナ、ビヨンセらを手がけるスターゲイト、ブリトニー・スピアーズ、マドンナ、マライア・キャリーらを手がけるトリッキー・スチュワートが参加。日本盤エキストラ・リミックス2曲を収録。

【Utada 公式サイト】http://www.utada.jp/

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