くるり of Groovin2009

ARTIST PICK UP

くるり

ロックン・ロールの未来はやっぱり"くるり"が切り拓いていく!
「さよならリグレット」や「愉快なピーナッツ」を含む13曲収録の
無国籍でストレートなロックン・ロール・アルバム!

(初出『Groovin'』2009年5月25日号)

くるり-A.jpg 先行シングル「愉快なピーナッツ」を初めて聴いたときは実に痛快だった。「さよならリグレット」や「三日月」の流れで待っていたファンは、良い意味で期待を裏切られたと思ったんじゃないだろうか。過度に装飾せずミドル・テンポでグイグイ押すグルーヴ、言葉とメロディの妙、大サビでの泣き。なんてオリジナルなロックン・ロール。やっぱり、くるりだよ、ってね。
 テクノやエレクトロニカに傾倒していた頃の『TEAM ROCK』や『THE WORLD IS MINE』だったり、クラシックにどっぷり浸かっていた頃の『ワルツを踊れ』だったり、岸田はその時々の潮流をうまく取り込んで"くるりの音楽"として昇華させてきた。そういう意味で今作はまったくのジャンルレス、"くるり"という名のロックン・ロールが鳴っている。今回のレコーディングの地"最新ごった煮カルチャーの発信地ニューヨーク"を舞台にした、8thアルバム『魂のゆくえ』は無国籍のロックン・ロール・アルバムだ。
 例えば「かごの中のジョニー」のサイケデリック感。既にライヴで披露されていた曲だけど、この独特の空気の震えはくるりにしか出せないものだろう。そして「魂のゆくえ」の軽やかでその実底知れぬ世界感や「背骨」で聴かせる重厚感など、無国籍で骨太なロックン・ロールが圧倒的な存在感をもって鳴っている。
 そして、アルバムのちょうど真ん中に置かれた「さよならリグレット」は、ロックン・ロールの大地に咲く一輪の花のようだ。アルバムで聴くと、この曲のもつリリカルな美しさが一際輝きを放っている。零れ落ちるようなピアノの旋律、郷愁を誘うメロディ、岸田の歌に寄り添うような土岐麻子のコーラス。『ワルツを踊れ』収録の大名曲「ブレーメン」同様に、岸田のもつ音楽そのものへのロマンティシズムの結晶のようで、ほとんど唱歌と言ってもいいくらいのすばらしい曲だと思う。
 ロックン・ロール。それはやはりロマンに溢れたものだ。くるりの音楽には、ロックン・ロールに対する溢れんばかりの愛情が詰まっている。だから僕らはくるりの音楽を聴き続ける。これからも、ずっと。

Text by 鈴木 篤

★名盤だらけのくるり、選りすぐりの6枚を選んでみました!

『さよならストレンジャー』
さよならスレンジャー-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICL-60365
¥3,045(税込)

1stシングルにして決定的な大名曲「東京」が収録された99年発表のデビュー・アルバム。今でもライヴ定番の叙情的な「虹」や盛り上がり必至の「オールドタイマー」をはじめ、あらためて振り返るとくるりのロックン・ロールが既に確立されていることが分かる。スゴイぞ、くるり。

『TEAM ROCK』
TEAM ROCK2-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICL-60696
¥3,045(税込)

テクノへの接近が強靭なビートを求め、高らかに生まれたギターロック・アンセム「ワンダーフォーゲル」を収録した2001年リリースの3rdアルバム。くるりの叙情性が極まった「ばらの花」は、数多くのアーティストにカヴァーされている名曲。これをベストに挙げるファンが多いのも頷ける1枚。

『THE WORLD IS MINE』
THE WORLD IS MINE-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICL-60854
¥3,045(税込)

『TEAM ROCK』で手にしたポスト・ロック的イディオムを完全に血肉化した、カラフルな色彩をもつ意欲的なアルバム。個人的には最も大好きな「ワールズエンド〜」があるだけでもベストな1枚。"絶望の果てに希望を見つけたろう 同じ望みならここでかなえよう"に何度救われただろう。

『ジョゼと虎と魚たち』
ジョゼと虎と魚たち-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICL-61220
¥1,890(税込)

同名映画のサウンドトラック。シングルとしてもリリースされた「ハイウェイ」は、映画のエンドロールで流れ印象的な余韻を残す。全体を彩るエレクトロニカを通過した豊潤な音はまるで水彩画のよう。リリカルで静謐。くるりの持つイノセントな側面が最も色濃くあらわれた1枚。

『ワルツを踊れ Tanz Walzer』
ワルツを踊れ-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICL-62510
¥3,045(税込)

クラシックとロックン・ロールの幸福な出会い。メロディとハーモニー、そしてリズムが見事なバランスで噛み合い、音楽のど真ん中を射抜く傑作7thアルバム。聴き手のイマジネーションをかき立て永遠の憧憬を歌う「ブレーメン」こそが、この時点で到達したくるりの最高地点だ。

『Philharmonic or die』
Philharmonic or die-J.jpg
スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
発売中
CD(2枚組)
VICL-62751〜2
¥3,045(税込)

パシフィコ横浜で行われたウィーン・アンバサーデ・オーケストラとの豪華共演、そして地元京都の磔磔で行われた狂熱のライヴを収録。ライヴ・バンドくるりの真骨頂を目一杯味わい尽くせる、2008年リリースの2枚組ライヴ・アルバムにしてベスト・アルバム。

『魂のゆくえ』
くるり-J.jpg

スピードスターレコーズ/
ビクターエンタテインメント
6月10日発売
CD
VICL-63341
¥3,045(税込)
くるり8枚目のアルバムは、無国籍で骨太のロックン・ロールが高らかに鳴り響く傑作。先行シングル「さよならリグレット」と「愉快なピーナッツ」を含む全13曲。

【くるり on WEB】http://www.quruli.net/

inserted by FC2 system